琥珀色の研究 -A Study in Amber-

( ・x・)<琥珀の沼で泳ぐ「ぱさぱさ」です。ご一緒にいかがですか?

エドラダワー バレッヒェン 10年(ミニボトル)

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Edradour
Ballechin 10YearsOld
HEAVILY PEATED
アルコール度数:46%
最低熟成年数:10年
容量:50ml

地域:ハイランド(スコットランド
蒸留所名:エドラダワー

【香り】

ドライなスモーキーさのなかに、カカオのような甘い香りと暖かみを感じる柑橘系の香り。薬品のような香りも混じる。

【味わい】

柔らかくバニラのようなクリーミーさ。しっかりとしたピートを感じるが、あまり持続しない。ただ、木が焦げたような香りが残るためか、スモーキーさが微かに残る。余韻は中程度ですっきりとした後味。

【もう少し詳しく】

知人に「こんなのあるよ」と教えてもらって、「どれどれ?」と思ってミニボトルを手に入れたのが、今回のバレッヒェンです。

ラベルにも缶にも「HEAVILY PEATED」と書かれています。わざわざ書くということは、セールスポイントなのでしょう。

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結論を先に書くと、ピートが苦手でなければ飲んでおいて損は無いと思います。フェノール値が50ppm以上となるように焚かれた麦芽を使っているとのことで、確かにピートはしっかりと感じます。 酒販店の紹介文などで、ラフロイグとの類似性を指摘しているのを見かけますが、なるほど、と頷ける部分もあります。

もっとも「ラフっぽい」という紹介を読んだ際に、勝手にスタンダードの「ラフロイグ10年」をイメージしていたので、首をひねる点もありました。

まずは上にも書いた「カカオ」という点です。何も考えずに飲んだのですが、この時点で「ん?シェリー樽原酒を使ってる?」と感じました。色もちょっと濃い目ですね。

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気になったので原酒について調べると、案の定というか、公式情報で「メインはバーボン樽原酒。そこにトップドレッシングとしてオロロソシェリー樽の原酒を使うことで、奥行きと複雑さが生まれているよ」という感じのことが書かれていました*1

Ballechin 10 Year Old

この「トップドレッシング」とされるオロロソシェリー樽については、「バーボンカスク70%、シェリカスク30%」という話も見かけます。カカオという部分は、シェリカスクの部分から感じたのかな?と思います。

さて、冒頭で「HEAVILY PEATED」を謳う割には余韻があっさりしていると感じました。確かにパンチというか、飲んだときの「ピート!」という部分については、かなり強いです。

裏ラベルには「大変スモーキーなモルトウイスキー」と書かれていますが、確かにちょっと焦げたような感じもするし、言わんとすることはわかります。

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ただ、この「スモーキー」って表現は、その中身の説明が難しいですね。私も端折っちゃったんですが、試しにGoogle画像検索で「スモーキーなウイスキー」と調べると、なんだか色々出てきます。

タリスカーもスモーキー。ティーチャーズもスモーキー。アードベッグもスモーキー。確かにそう言われますが、実際に飲んでみると、やっぱり全然違うものですよね。

とりあえず、今回はボウモア12年とラガブーリン16年と飲み比べてみました。ちなみに、ボウモアを飲んだ時には軽く酔っていて、写真を撮り忘れました……。

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熟成年数が長いしアルコール度数も低いせいか、ボウモア12年とラガヴーリン16年が丸く感じられます。アタックはバレッヒェンのほうがガツンときますね。ただ、余韻については、バレッヒェンの方があっさりしているんですよね。

同じ10年表記でアルコール度数も46%、フェノール値も似ているアードベッグTENは、もっとじんわり続くし、AN OAについては、記録を読み直すと「余韻は長め」と書き残していました。

amberlover.hatenablog.jp

あと、潮っぽさというか海っぽさがないというか、じめっとしないというか。なんか海辺じゃないという感じです。

例えば、先日飲んだピートモンスターは、文字通り強いピートを感じたのですが、その一方で湿度というか「モワッ」とする湿り気を感じて「トバモリー蒸留所?レダイグ?」という印象を受けました。

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そんなわけで、このバレッヒェン10年をブラインドテイスティングで出されたら

「なんかラフっぽいけどなんか違うし……そもそもアイラなのかな。あと海辺じゃないような。不思議な感じですね。ボトラーズボトルですか?……えー、オフィシャルボトル?マジっすか、何だろ?」とか言いながら、首を傾げていると思います。そして、今の私では内陸部までたどり着けたら御の字ですね。

まあ、最終的には「美味い、面白い、美味い」と言いつつニヤニヤしながら飲んでいると思いますが。

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さて、そんな美味しいうえに面白い「バレッヒェン」ですが、作っているのは上述した通りエドラダワー蒸留所です。

エドラダワー蒸留所の所在地は、ハイランドのパースシャーのピトロクリーという街です。風光明媚な観光地なのだとか。ご近所にブレア・アソール蒸留所があって、Googleさんによると車で6分程度だそうです。

エドラダワー蒸溜所は1825年創業です。生産量も生産設備も小さなことで知られていますが、もともと地元の農家の方々が寄り合って作られたそうです。オフィシャルサイトでも「Edradour Is The Last Original ‘Farm’ Distillery.」というマイケルジャクソン氏の言葉を引用しています。

edradour.com

そんなエドラダワーで2003年から蒸留が始まったのが、「バレッヒェン」というシリーズです。Webサイトに「History」というページが用意されており、バレッヒェンも紹介されています。

ちなみに、なかなか凝ったつくりで、リンドーズアビーや密造酒についても触れているので是非ご覧ください。

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Edradour Distillery :: History

なお、バレッヒェンの由来については、1927年に閉鎖された蒸留所の名前ですね。アルフレッド・バーナードが書いた『大英帝国ウイスキー蒸留所(原題:『Whisky Distilleries of the United Kingdom』)にも登場する蒸留所です。

エドラダワーのオフィシャル通販サイトでは、以下の通りに紹介されています。

The name Ballechin originates from a fellow Perthshire farm distillery, which sadly closed its doors in 1927. There, Alfred Barnard, who catalogued all the distilleries in the UK in the 1880’s, made reference to having experienced a peated whisky.

Ballechin 10 Year Old

最後に、上でもちょこちょこ紹介していますが、エドラダワー蒸留所の公式オンラインショップをご紹介しておきます。残念ながら日本まで配送してもらうことは無理なようですが、眺めているだけでも楽しいです。

edradour.com

 ウイスキーやらギフトセットがあるのは当然なので、割愛します。目が留まったのは、小物と言うかグッズと言うか、そういうものです。

まずは野球帽。イギリスといえば「野球」というよりもクリケットのときに被っているイメージがありますね。

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Baseball Cap

次は「モルトウイスキーファッジ」。エドラダワーモルトウイスキーをちょこっと混ぜているのだとか。最近は日本でも洋酒入りチョコレートが発売され始めていますが、寒くなってきたら、こういうお菓子も美味しいですね。

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Malt Whisky Fudge

あとは、エドラダワー入りのラズベリージャムなんていうのもありますね。近所で手に入ったら買うのですが、さすがにスコットランドから買い付けるのは……ねえ。

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Raspberry Preserve

あ、ちなみに私が欲しいのはマグカップです。エドラダワー蒸溜所が描かれていて、可愛らしいんですよね。

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Coffee Mug

他にもグレンケアンのテイスティンググラスとか、エドラダワーのロゴ入りウイスキータンブラーとか、色々とあります。

欲しいなあ、良いなあと思いながら、本日はこの辺で失礼します。

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*1:原文:predominantly from ex Bourbon casks with a generous top dressing of ex Oloroso Sherry casks, to create added depth and greater complexity.