アルコール度数について
樽で熟成が進んだウイスキーは、ビンに詰められて販売されます。その際に、多くのウイスキーは、加水されてアルコール度数を下げて出荷されます。ここでは、主要国でのアルコール度数と私たちが選ぶ際の考え方について書きます。
なお、樽出し原酒とも言うべき「カスクストレングス」もありますが、それは別途に記事を書いたので、そちらもよければご参照ください。
ビン詰めする際のアルコール度数の規定(2018年1月現在)
各国で規定が様々ですが、おおよそ40%以上が基準だと考えても良いでしょう。各国の基準となる文書を探してリンクを貼ったので、必要であればお読みください。
- スコッチウイスキー :最低瓶詰めアルコール度数は40%*1
http://www.scotch-whisky.org.uk/media/12744/scotchwhiskyregguidance2009.pdf - アメリカンウイスキー :80プルーフ(40%)以上でボトリング*2
https://www.ttb.gov/rulings/2016-3.pdf - カナディアンウイスキー:瓶詰度数は40%以上*3
Food and Drug Regulations - アイリッシュウイスキー:最低瓶詰アルコール度数は40%
- ジャパニーズウイスキー:度数の規定なし
ちなみに、私は英語が苦手なので、より適したものがあれば教えていただけると嬉しいです。
「度数が低い=飲みやすい」とは限らない
アルコール感が苦手な方は、飲みやすさを度数で判断されることがあるようです。実際に「スーパーやコンビニで見かける37%のウイスキーって、どうなの?」と訊かれることがありますが、私は「あまりおすすめしません」と答えています。
既に書いた通り、アルコール度数はおおよそ40%以上が世界基準だと考えても良いでしょう。「よそはよそ、うちはうちじゃん」と言われそうですが、各社が気合を入れて発売する商品で40%未満の商品は見かけませんよね。
左:サントリー 響30年 43%
中:ニッカ MALT 100 Whisky The ANNIVERSARY 40%
右:ニッカ BLACK BLENDER'S SPIRIT 43%
荒っぽい言い方かもしれませんが、37%のウイスキーは豊潤さに欠けるものが多いように感じます。手っ取り早く酔っ払いたい場合は、選択肢に入るかもしれませんが、味わいを求める場合は避けるべきでしょう。
熟成することで、まろやかな味わいになっていく
上の写真は今から数年間に白州蒸留所を訪問した際の写真です。右下に移っている看板には、「樽の中でウイスキーは呼吸をしています」「樽材の成分がウイスキーに溶け込み、徐々にあの特有の琥珀色、深い香り、まろやかな味わいをもたらします。」と書かれています。
この説明の通り、アルコール度数が高くても、よく熟成されていて味わいに深みが出ていることがあります。その結果、あまりアルコール感が気にならないこともあります。 また、熟成することでピートも和らいでいくことがあります。アイラモルトのなかでもピートが強く、ヨード香の主張がするアードベッグでも、20年以上の熟成させたものは、かなりまろやかになっていました。
もっとも熟成年数が長いほうが絶対に良いとは言い切れません。特に、アイラモルトなどピートの強いウイスキーが好きな方にとっては、「けっ、円くなりやがって」と不満に思われるでしょう。
また、熟成年数が長いとエンジェルシェアが発生するので販売本数が限られたり、管理費用を上乗せしたりする必要があるし、そもそも原酒が長期熟成に耐えられずに樽を舐めたような味になってしまうリスクもあるようです。
いずれにせよ長期熟成のウイスキーは価格が高くなります。でも、飲んでみる価値はあると思います。
樽の力はすごい
ちなみに、樽の影響力を知りたい方は、熟成前の「ニューポット」を飲むことをお勧めします。ただし、機会があれば、程度で良いと思います。
というのは、私もウイスキーのニューポットやブランデーのオードヴィーを幾度か飲んだことがありますが、美味しく常飲できるとは言えないからです。自分が無理なものを、他人にオススメすることはできません……。
確かに、その作り手の方向性や原料の雰囲気は明確に感じられるのですが、味わいを楽しむとなると、ちょっと難しいかなぁと思います。*4
こうした原酒が樽のなかで熟成し、まろやかで味わい深くなっていくのだから、樽の力はすごいなあと思います。
ちなみに、樽については別にもまとめたので、よければお読みください。
おわりに
樽と熟成年数、個性についてはタリスカーの公式ページに掲載されているグラフが、とてもわかりやすいと思います。①~③がそれぞれ何を表すか?それは、是非、公式サイトでご確認ください。
また、ここでもときどき紹介しているBarrelさんも、アルコール度数について記事を書かれています。アルコール摂取量からカクテルなどにも言及されていて、幅広い情報が得られるので、オススメです。