琥珀色の研究 -A Study in Amber-

( ・x・)<琥珀の沼で泳ぐ「ぱさぱさ」です。ご一緒にいかがですか?

オフィシャルとボトラーズ

はじめに

 確か大学3年生だったと記憶しています。大学近くの激安販売店や近所のイオンでウイスキーを買っていた私は、少し足を延ばして大手の酒屋さんに行きました。すると、そこには見たことが無いボトルがたくさん並んでいました。はやる気持ちを抑えつつ、目移りしながら選んだものは、大きく「S」と書かれた銀色の缶でした。Sがかっこよかったんです。

 詳しい方はピンと来たと思います。「S」は「SIGNATORY」の頭文字。私が初めて購入したボトラーズブランドでした。

目次

同じ蒸留所でも色々なボトルがある。 

 まず、デザインは異なる三本のボトルをご覧ください。三本ともに「Craigellachie」と書いてあります。これが蒸留所の名前です。読み方は長年にわたって意見が分かれていますが、私は「クライゲラキ」と読んでいます。この部分は後述します。

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 何だか「私はロボットではありません」の画像認証みたいですが……。三本のボトルは、発売時期の順番に並べました。以下の通りです。

 上は当時のオフィシャルボトル*1、真ん中は現在のオフィシャルボトル、舌はリカーマウンテン社のプライベートブランドです。

オフィシャルボトルとボトラーズブランド。

 「オフィシャル」はその名の通り、蒸留所を所有する企業が販売するボトルです。

 これに対して、蒸留所から樽を買って瓶詰めする業者は、その名の通り「ボトラーズブランド」と呼ばれます。ウイスキーだけでなく、ラムやブランデーなども扱っていることがあります。

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 スコッチのオフィシャル品は通常は50~100樽、多いときで200~300の樽から原酒を混ぜることで味わいを整えていますが、それに対してボトラーズは樽の個性や特徴や個性を強く出そうとする傾向があると思います。

 近年では、ボトラーズ会社が蒸留所を買収する例もあります。ゴードン&マクファイルがベンロマック蒸留所を立て直したことは、大きなニュースになりましたよね。また、2014年にアデルフィがアードナムルッカン蒸留所をオープンして、スピリッツが出回り始めています。

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 ボトラーズブランドは数多くあるので一概には言えませんが、ボトルラベルに蒸留年月や熟成させた樽の種類などが簡潔にまとめられているものが多い印象を受けます。

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 その一方で、蒸溜所不明、中身非公開で発売されるものもあります。

蒸留所不明のボトルもある。

 こうした中身不明のものは、縁のある人物や土地にちなんで名付けられることもあります。その場合は、手がかりを辿っていくと、何となくわかることもあります。

 例えば、このボトルで考えてみましょう。

Finlaggan
The ORIGINAL Peaty CASK STRENGTH
700ml 58%

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 ちなみに、Googleで「フィンラガン」と入力すると、予測変換で「中身」が出てくるぐらいには有名なので、お時間が無い方は検索なさってください。

 「ISLAY SINGLE MALT」と「FinLaggan」がヒントになりそうです。

  1. ISLAY SINGLE MALT」と書かれているので、アイラ島の蒸溜所に限定される。
  2. 「FinLaggan」はアイラ島北部に位置する湖の名前である。
  3. フィンラガン湖の東にカリラ蒸溜所、北東にブナハーブン蒸溜所がある。
  4. オフィシャルボトルと飲み比べて、どちらが似ているか考える。

 今のところ、フィニッシュの感じが似ているという理由で、私は「カリラ」だと思っています。でも、違うかもしれません。それでも、カリラでもカリラじゃなかったとしても、とても美味しくてオススメできるウイスキーです。

 こうした蒸溜所不明のボトルは、他にもいろいろと販売されています。蒸留所が不明なボトルは良い味わいのものでも、高騰しない印象を受けます。私は蒸留所に対するこだわりがあまり無いので、*2こういうボトルをときどき買います。蒸溜所にこだわらなければ、選択肢の一つとなります。

結局、どう選んだらいいのか。

 この部分は意見が分かれることも多いので、私の感想だと思って読んでください。

 まず、蒸留所の特徴や傾向を知りたかったらオフィシャルボトルが最良だと思います。ボトラーズブランドは樽の個体差で左右されることも多く「あれ、この蒸留所ってこんな感じだった?」というものもあるようです。多くの樽から原酒を選び、品質を安定させる技術はオフィシャルボトルならではだと思います。

 その一方で、ボトラーズブランドは熟成年数が長くアルコール度数も高いボトルを、比較的安価で手に入れることができるのが魅力だとも思います。また、なかなか手に入らない蒸留所のウイスキーを発売していることもあります。

 最終的な答えは好みの問題です。なので、悔いのない選択をするために買いたい理由や飲みたい理由を整理してください。「個性が知りたい」「長期熟成が飲みたい」「ラベルがかっこいい」「ボトラーズでしか手に入らない」「蒸留所不明な点が良い」。どれも立派な理由だと思います。

おわりに

 ちなみに、「Craigellachie」蒸留所は「クイゲラ」とも「クイゲラ」とも「クイゲラ」とも「クゲラヒー」とも読まれてきました。今でもネットで検索すると色々な表記が見られます。

 販売元のサッポロビール社は「クライゲラキ」なので、クライゲラキで統一されていくと思いますが、ネットショップなどで検索する際は、いくつかの読み方を試すことをお勧めします。

*1:レギュラー商品ではないので「自己所有の蒸留所の瓶詰め」という表現が適切かもしれません

*2:もちろん好きになる確率が高い蒸留所はありますが