グレングラッサ オクタブ ピーテッド(終売品)
GLENGLASSAUGH
OCTAVES PEATED
アルコール度数:44%
容量:700ml
最低熟成年数:表記なし
地域:ハイランド
種別:シングルモルト
【香り】
ピート香は決して強くない。出汁。インク。やや発酵したような香り。醤油。木材。軽くスモーキー。これは時間が経つと顕著になる。同時に、やや若さを感じるようになる。
深く吸い込むことで、甘い香りを拾える。バニラ、アプリコットジャム(果物を煮詰めたもの、というよりも人工的な甘さのように感じられた)。
【味わい】
アタックは度数相応だが、その後に広がる味わいは柔らかく、じんわりとピートが広がる。八朔のような強い苦みを伴う甘みが感じられた。
途中で不意に、若さを感じさせるニューポットのような印象を受けた。
中盤からスッとフェードアウトしていき、余韻も長くはない。鼻孔に黒コショウのようなスパイシーな香りが残る。全体を通して、ややシンプルな印象を受けた。
【もう少し詳しく】
印象に残っているのは、飲んでいて不意に「あれ、若い?」と感じられたことです。膝カックンというか、ストンと若さを感じたんですよね。あまり経験したことがなかったので、不思議な感じでした。
さて、名前にも使われている「オクタブ」。既にご存知の方も多いでしょう。「オクタブ」は小さな樽です。シェリーバットに比べて1/8サイズで、容量が50リットル前後となります*1。「オクタ」の名の通りですね。
今回、不思議な印象を受けたのは「オクタブを使えばこうなる」というものでもないのでしょうけれど、一度オクタブについて整理しておこうと思います。
まず、グレングラッサの公式サイトを読むと、以下の通りに説明が書かれています。*2
ふんふんと読むと「あー、そーゆーことね。完全に理解した」みたいな感じになります。というか、私はなりました。
確かに、入れ物を小さくすればするほど、樽に接する部分の割合が増えます。実際に、この考えを基にして20リットル前後の小容量の樽を作っているメーカーもあります。
ただ、あらためて「本当に接触面積が増えれば良いことづくめなのか?」と考えてみると、そう単純な話では無いと思います。確かに、接触面積を増やすことで、樽から影響を受ける部分も大きくなるでしょう。
しかし、「影響をたくさん受ける」ことと「熟成が早まる」ことは、同じではないと考えます。
スコッチの容量規定は「700リットル以下のオーク樽でのみ熟成されていること」が条件です。オクタブなど小さな樽がベストであれば、多くの蒸溜所が小さな樽へと切り替えていく……はずですが、現状は違いますよね。ということは、やはり小さな樽はベストでは無いと考えられているのでしょう。
とは言うものの、秩父の「ちびダル」やラフロイグの「クォーターカスク」など、小さな樽を使ったウイスキーは発売されてきました。ダンカンテイラーやA.D.ラトレーからもオクタブシリーズが出ています。
最初は試験的な試みだったのかもしれませんが、今では「こういうのもあるよ」という感じで定着してきたような感があります。
なお、グレングラッサ蒸溜所は休止の時期を経て、2008年から再稼働しています。その際にカスクオーナーを募集したのですが、それが50リットルのオクタブでした。
スコ文研の土屋さんも購入されたのですが「オクタブは、思ったよりも熟成がゆっくりだった」という旨の感想を書かれています。
今回の感覚は、たまたまだったかもしれないので、今後も色々と試していこうと思います。
【グレングラッサ蒸溜所について】
所在地は、東ハイランドのマレイ湾に面した漁村ポートソイです。GoogleMAPで覗いてみると、近くにオートキャンプ場があるのど、割とのんびりしたところのようです。
少し前には「グレングラッソー」という読み方も見かけましたが、現在では「グレングラッサ」という読み方が定着していますね。
かつてはフェイマスグラウスやカティサークの原酒として使われていましたが、1986年に生産中止になりました。
「生産中止」と言っても、実質は閉鎖だと言われており、グレングラッサの再稼働はあり得ないと思われてきたのだとか。
しかし、2008年にオランダのスカント・グループ社に買い取られ、2009年には再稼働しました。*3この復活劇の中心となった人物は、スチュワート=ニッカーソン(Stuart Nickerson)さん。閉鎖後の1987年から数年間グレングラッサの管理もされていたそうです。
その後もグレングラッサ蒸溜所の所有権は移り続け、現在はブラウンフォーマン(Brown-Forman)グループが所有しています。
日本での正規販売代理店はアサヒビールさんで、現在は以下の3つのラインナップがレギュラー販売されています。
- リバイバル
- エボリューション
- トルファ
今回の「オクタブ ピーテッド」は、日本市場割当は52本のみだったそうです。とは言うものの、即完売というわけでもなく、しばらく各社のオンラインショップに残っていました。
というのも、グレングラッサの知名度は、決して高くないんですよね。
でもでも、決して派手では無いけれど、知っている人は知っているし、好きな人はとことん好き。
BLEACHで言えば檜佐木 修兵。パトレイバーで言えば石和巡査部長*4。魔法使いの嫁で言えばジョエル・ガーランド。そんな感じじゃないでしょうか。
ですから、グレングラッサについて熱く語る人が「私、この分野では素人でして……」と言ったら「嘘だッ!」と言っても良いんじゃないでしょうか。
なお、今回のボトルは2016年の限定販売です。「終売品」と書いた通りWebサイトでも「Archive」にカテゴライズされています。
現在のところグレングラッサのピートタイプは「トルファ(Torfa)」がレギュラー販売されています。また、オクタブピーテッドについてはBatch2がリリースされており、海外のお店では在庫を見かけます。
興味がある方は、調べてみてはいかがしょうか。
【最後に】
グレングラッサは、上記の通り知名度は高くありません。そのため、オールドボトルも比較的手に入れやすい部類に入ると思います。でも、とても良いウイスキーだと思います。派手さは無いんですが、何というか、そういう人間になりたいなあと思う蒸溜所のウイスキーですね。
ちょっとよく分からない例えになってしまいましたが、とりあえず今日はこのあたりで失礼させていただきます。
現場猫の「ヨシ!」に似ている気がするんです。ピートくんは基本ポーカーフェイスなのですが、ときどきこういうコミカルな雰囲気を出してくれます。
【参考にしたサイトおよび書籍】
- グレングラッサ蒸溜所を訪ねて | WHISKY Magazine Japan
- 『ウイスキー通信』No.33 July ウイスキー文化研究所(現:スコッチ文化研究所)
- The Scotch Whisky Regulations 2009|Definition of “Scotch Whisky” and categories of Scotch Whisky
- Glenglassaugh launches Octaves Batch 2|THE SPIRITS BUSINESS
- Octaves from Duncan Taylor |
- The Octave Project | Scotch Whisky | A D Rattray
- 科学の力で良質のウィスキーを短時間で熟成することは可能なのか? - GIGAZINE
- 『ウイスキーコニサー資格認定試験教本2015【下巻】』|スコッチ文化研究所
- 『ブレンデッドスコッチ大全』|小学館
*1:コニサー教本では「45~68リットル」となっています。
*2:(略)this whisky has been matured in octave casks, made from staves of a used cask, that are approximately 1/8th the size of a butt. A smaller cask allows for more interaction between the wood and the spirit, giving the whisky a great depth of flavour in a short period of time.
*3:「エドリントングループはグレングラッサ蒸溜所のメンテナンスを続けていたから、わずか1年で再稼働することができた」と聞いたことがあります。
*4:テレビアニメ版だと「五味丘 務」巡査部長だそうですね。