琥珀色の研究 -A Study in Amber-

( ・x・)<琥珀の沼で泳ぐ「ぱさぱさ」です。ご一緒にいかがですか?

富士山麓 樽熟原酒50°

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富士山麓
樽熟原酒50°
発売元:キリンウイスキー
容量:700ml
アルコール度数:50%
種別:ブレンデッドウイスキー
地域:日本
備考:ノンチルフィルタード

【香り】

リンゴの蜜のような甘やかな香り。ガムシロップ。しっかりと嗅ぐことで、青いバナナや生木のような香りを感じる。

時間が経つと、シンナーのような香りもあるが、全体的に穀物を思わせる甘い香りが強いため不快ではない。

少量加水をすることで香りが落ち着いたので、匂いが強いと感じた場合は、好みに応じて数滴の水を垂らすと良いだろう。

【味わい】

パワフルだが口当たりはなめらか。程よい渋味も感じるが、徐々に穀物の甘みが膨らんでくる。清涼感も感じるが短くキレが良いため、口の中に甘みが残った。

度数に加えて若さを感じるためストレートで飲み続けるのは難しいだろう。個人的な好みはオンザロック。徐々に氷が溶けていくことで変化を楽しめた。

ただ、冷えることで様々な要素が曖昧になることは否めないので、少量加水も試されることをおすすめしたい。

【もう少し詳しく】

昨日に引き続き、今日も富士山麓についてです。今回は現行品、つまり来春に終売が発表されたものです。発売は2016年3月22日(火)でした。

発売当初、私の周辺では「なんか旧ラベルと味わいがガラッと変わった!」という話で持ちきりだった記憶があります。

www.kirin.co.jp

そんな富士山麓も約3年で終売になってしまうのですね。個人的には、WP試験の際に、地域や種別、度数に加えて銘柄まで正答できたウイスキーなので、そういう面でもお世話になったわけで、ちょっと寂しい気持ちです。

amberlover.hatenablog.jp

さて、では今日は富士山麓について少し掘り下げてみます。そもそも、富士山麓シリーズとは、どういったウイスキーなのでしょうか?

例えば、以下のような問意を投げかけられた場合、あなたはどのような返答をされますか?

  • なぜ年数表記が無いのですか?
  • なぜアルコール度数を明記しているのでしょうか?ストロングゼロの先駆けなのでしょうか?
  • なぜほのかにバーボンライクな後味なのでしょうか?

バーテンダーの方なら楽勝かもしれませんね。でも、私の場合、ぼんやりとは知っていたものの、あらためて書こうとしたところ「ぐぎぎ……うまく書けん」となってしまいました。

【富士山麓のコンセプト】

そこで『WhiskyGalore』で田中さんが語られている内容を要約することで、「富士山麓とはなんぞや?」をまとめました。

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  1. 年数表記が無くノンエイジであることには意図がある。年数はあくまでも数字であって、重要なのは熟成の度合いであると考えている。
  2. 富士山麓50°のコンセプトは、原酒そのままの味わいを大切にするというもの。
  3. そのため、原酒本来の力強さや個性を出すことをねらって、間もなく熟成のピークを迎える若い原酒を加えている。
  4. 同時に、複雑さを出すことを狙って、熟成のピークを過ぎた長期熟成の原酒も加えている。
  5. 使用しているグレーンは、バーボン用のダブラー蒸留機によるヘビータイプが多めである。
  6. バーボンタイプのグレーンを使うという発想は、フォアローゼズ蒸溜所での経験が大きかった。
  7. 富士山麓シリーズの樽詰め度数は、モルト原酒が50度、バーボンタイプは55度。
  8. 熟成に用いる樽はファーストフィルのバーボン樽が中心。用途に応じて新樽やセカンドフィルの樽も組み合わせている。

いかがでしたか?個人的にポイントだと思った箇所を青色太字で強調しました。ノンエイジの部分については「本当かなあ?」と半信半疑な部分もあるのですが、キリンさんがグレーンに拘っていることは、前回も触れた通り有名です。

新ラベルは旧ラベルからガラッと雰囲気が変わってはいるものの、奥底の部分でやはり淡いバーボンらしさは感じるのは、グレーンの影響なのでしょうね。

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ブレンデッドウイスキーは多様な飲み方が面白いので、色々と試してみました。

【色々な飲み方を試してみました】

まず、少量加水です。本当はスポイトで入れるべきなのでしょうが無くしてしまったので、ストローで入れました。ストローの先端を水に浸して反対側の口を親指で抑えます。こうすると、水がストロー内に溜まります。

でも、ちょっと恥ずかしいので撮影しませんでした。ごめんなさい。

次に、オンザロックです。冷凍庫の製氷機で作っても構わないとは思いますが、買ってきた氷の方が美味しいと私は感じます。あと、製氷機の氷は小さくて溶けやすいというデメリットもありますよね。

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小容量だと108円で買えるものもありますし、費用対効果が大きい分野だと思います。透明感が出ますし、カラン……という氷の音も気持ち良いものです。

さて、次はソーダ割り。今回もウィルキンソンのタンサンを使いました。拘られる方は割り水やソーダ水の銘柄まで吟味されますね。炭酸水にお詳しいバーテンダーの方は、信頼できる印象を持っています。

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確かに炭酸水の味って微妙に違うし、私も好みの炭酸水もあれば苦手な炭酸水もあります。私はウィルキンソンのタンサン、南アルプススパークリング、サントリーソーダあたりをローテーションしていますね。

で、今回は一風変わったことをやりたかったので、ウィルキンソンジンジャーエールで割ってみました。使ったジンジャーエールは瓶のバージョンです。

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ちょっと好みは分かれそうですが、好きな方は大好きなんじゃないでしょうか。ジンジャーエールの量を調節すると、色々と楽しめそうですね。 ただ、この時点で明らかに良いが回ってきていたので、止めましたが……。

ちなみに、公式Webサイトでは、キリン関係者の方々のオススメの飲み方が紹介されています。

www.fujisanroku.jp

私が「おお!」と思ったのは、熟成担当者や生産管理担当者の方のオススメも載っていることです。こういう裏方ともいえる方々を紹介するのは、私はすごく好きで大事なことだと思うので引用させていただきます。

まず、熟成担当者の方は「夏は水割り、冬はお湯割り」とのこと。確かにWeb上でも「富士山麓のお湯割りうめー!」という声を見たことがあります。

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次は生産管理担当者の方です。きっと胃が痛い仕事ですよね……。ウイスキーが好きだった後輩は、こういう部署に配属されてみるみるうちに痩せていきました……。元気かな。また飲みましょう。

生産管理担当者の方のオススメは「ハーフロック」です。「あれ、ハーフロックってサントリーさんがアピールしている言い方のような……」と思いましたが、業界標準となっているのだとも言えますね。

f:id:pasapasadayo:20181129234321p:plainこの他、Twitterなどで調べると、梅などを漬け込んでフレーバードウイスキーとして飲まれる方も見かけました。

ウイスキーは嗜好品ですし、悪ふざけで無ければ色々な飲み方を試してみて、自分好みの飲み方を探るのも面白いですね。

色々な飲み方と言えば、キリンさんの公式オンラインショップDRINXで販売されているブレンドキットをご存知でしょうか?

富士御殿場蒸溜所
“おうちで愉しむブレンディング”The Fuji Gotemba BLEND KIT

https://drinx.kirin.co.jp/whisky/fg/blendkit/

私もブレンドキットを買いました。お値段10,800円。グレーンウイスキーセットを買おうと思ったのですが売り切れだったので、ちょっと奮発したんです。

しっかりした厚手の段ボールボックスに入っています。

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中にはブレンドキットのほかに、結構大きなサイズのパンフレットも入っているので、こちらを紹介します。

ここにもキリン関係者の方オススメのブレンド方法も書かれています。スチルマンやHouskyプロデューサーの方も登場しているので良いですね。ちなみに購入したのは結構前なので、旧ラベルの富士山麓が紹介されています。

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裏面はこんな感じです。商品紹介とテイスティングやブレンディングの説明が書かれています。親切設計ですね。

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ブレンダーさんのように上手くはいきませんが、一人で「ふふふ、上手くいったぞ」とか「うーん、ちょっと違うかなあ」とブツブツ言いながら楽しむのは、危なくも至福の時間です。

もちろん、気の合う仲間と共同出資して楽しむことができれば、また格別な時間となるでしょうね。

【おわりに】

折しもキリン富士御殿場蒸溜所は今年で45周年。その年に普及品である「富士山麓樽熟原酒50°」が終売となるのは、何とも皮肉な話だとは思います。

実は予兆があったというか、11月17日付けの日経新聞記事で「蒸溜所増強したよー」というニュースが流れました。当時は「シグネチャブレンド出したからかな?」と思っていたのですが、今となってはこの時には既に終売が決まっていたのでしょうね。

r.nikkei.com

でも、あらためて考えてみると、以前と比べてウイスキーコーナーで立ち止まっているお客さんが増えたような気がします。先日もお若い男女が「あ、これ知ってる」「どれがいいかなあ」と言って盛り上がっていました。

あと、各社の海外展開も進んでいますね。

forbesjapan.com

www.kirin.co.jp

www.nikkei.com

法整備も含めて課題は色々とありますが、裾野が広がったことそのものは嬉しいです。残念なことも色々とありますが、今あるものを楽しんでいきたいですね。

そんなことを考えながら、本日はこのあたりで失礼させていただきます。

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