琥珀色の研究 -A Study in Amber-

( ・x・)<琥珀の沼で泳ぐ「ぱさぱさ」です。ご一緒にいかがですか?

竹鶴17年 ピュアモルト

【はじめに】

1月17日は阪神大震災が起こった日です。1995年1月17日5時46分52秒に発生した大地震によって、多くの方が犠牲になりました。布団の中で寝ていた私ですが、大きな揺れが起きたことを今でも記憶しています。

亡くなった多くの方々に対し、衷心より哀悼の意を表します。

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【香り】

軽く焼いた木。カシスなどの赤い果実。少しオイリーな面もあるか。

その後、ドライフルーツのような濃厚な香りとともに、徐々に穀物の香ばしさも感じられるようになった。少し土っぽさも感じるが、適切かどうか少し自信がない。

多様な香りを感じるが、まとまりを感じるまでには、少し待った方が良いと感じた。

【味わい】

口当たりは柔らかで刺激はほとんど感じない。優しく甘やかではあるものの、ボディはしっかりとしている。香り同様、苺のような赤い果実をイメージする甘酸っぱさを感じる。シェリー樽由来のものだろうか。

こうした甘酸っぱさは、徐々に影を潜めリッチなフルーツ感が顔を出してくる。ややドライフルーツのような濃厚さも感じられる。

その後は穀物の香ばしさとともに、渋味も感じつつ、少しスパイシーさも出てくる。余韻についてはすっきりとしているが、レーズンのような甘い香りが鼻腔に残る。

【もう少し詳しく】

 テイスティングコメントが長くなりました。というのも、これ、飲むタイミングによって評価が変わりそうだと思います。

また、ちょいと「もわあん」と硫黄っぽさでもいうのでしょうか。そういう要素も感じられるので、その点でも苦手な方もいらっしゃるかもしれませんね。そういう場合は、開栓してから時間が経った方が良いのかもしれませんね。

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さて、前回が「鶴」だったので、次はやっぱり「竹鶴」に進んでおこうかな?と思った次第です。発想が安直だとお叱りを受けるかもしれません。

ただ、「鶴」と「竹鶴」の違いについては、絶対に書いておきたかったんです。というのも、「鶴」と「竹鶴」って全然ちがうウイスキーだからです。

そんなわけで、今回は名前は似ているけれどジャンルが異なる「鶴」と「竹鶴」について少し整理をしておきます。

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では、名前が似ている「鶴」と「竹鶴」は、どのように異なるのでしょうか?ジャンルが異なることについて少し整理をしておきます。

まず、「鶴」は「ブレンデッドウイスキーで、竹鶴は「ブレンデッドモルトウイスキーピュアモルトウイスキー*1です。

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では、ブレンデッドウイスキー「ブレンデッドモルトウイスキーとは、何が違うのでしょうか?

まず、原材料を比較してみます。左側が鶴右側が竹鶴17年です。見比べてみてください。ちょっと違いますよね。

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そうですね、にはグレーンウイスキーが入っていて、竹鶴17年にはグレーンウイスキーは入っていないということが分かります。

これについては、補足としてニッカさんのWebサイトにある図を引用させていただきます。

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竹鶴ピュアモルト|竹鶴ピュアモルトとは|NIKKA WHISKY

つまり、ブレンデッドウイスキーである鶴にはグレーンウイスキーが入っていてブレンデッドモルトウイスキーである竹鶴にはグレーンウイスキーが入っていないということになります。

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こう書くと、何だかグレーンウイスキーが良くないものという印象を受けるかもしれません。でも、そんなことはありません。誤解を与えてしまっては申し訳ないので、ちょっと補足しておきます。

【グレーンウイスキーについて】

穀類が主体となるグレーンウイスキーは、それ自体を飲むことは決して主流であるとは言えません。この理由は色々あるでしょうけれど、なんというか「やっすい穀物で作ったまぜもの」 みたいな扱いを受けている気もします。これについては、むかしむかしの話ならともかく、現在は当てはまらないと思います。

例えば、ニッカさんのカフェモルトやカフェグレーンは美味しいです。飲まず嫌いせずに、一度は体験してみて欲しいなあと思っています。

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ただ、味わいとしては「地味」とでも言うのでしょうか。一部のアイラモルトのような強烈さは感じないし、そもそもグレーンウイスキーは長熟に耐えにくいという面があります。*2そういう意味で、「悪くないんだけど、ちょっと単調かなあ」という意見があることは、私も理解できます。

ですから、「知多」が「風香るハイボール」と銘打ち、最初から軽さや柔らかさを売りにしたのは「上手だなあ」と思いました。さすがは宣伝上手のサントリーさんです。私も家事のお供に、知多ハイを飲むことがあります。

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もっとも、ブレンデッドウイスキーにおいては、グレーンウイスキーが果たす役割は大きいと各社のブレンダーさんが主張されています。ホワイト&マッカイやウィリアム・グラント&サンズの方にインタビューした記事があるので、ご紹介しますね。

whiskymag.jp

日本国内に目を向けると、ニッカさんがカフェ式連続式蒸溜機にこだわったり、キリンさんが 25年表記の長熟グレーンをリリースされたり、サントリーさんが白州にグレーンウイスキー生産設備を作ったりしてきました。これらもあわせて知っておくと、より一層楽しめるかと思います。

なお、キリンさんについては、「富士山麓」について書いたときに触れたので、良ければご覧ください。

amberlover.hatenablog.jp

【竹鶴17年とコンペティションについて】

さて、竹鶴17年について話を戻します。竹鶴17年はウイスキーの国際的コンテスト「ワールド・ウイスキー・アワード2018」(WWA)に選ばれています。初めて選ばれたわけではなくて、2012年、2014年、2015年に続き4回目の受賞とのことです。

www.worldwhiskiesawards.com

ジャパニーズについては、こちらをご覧いただくと分かりやすいでしょう。

whiskymag.jp

海外サイトを眺めて面白かったのは「日本のウイスキーが受賞するのは、特に目新しいことではない」という意見がちらほら見かけられたことですね。「日本製は安かろう悪かろう」と言われていた時代の話を知っているので、感慨深かったです。

また、ワールドベスト・シングルカスクシングルモルトウイスキーに選ばれたウイスキーが、オーストラリアのサリバンズコーブだったことは衝撃をもって迎えられたようですね。

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【速報】ワールド・ウイスキー・アワード2018最終結果 | WHISKY Magazine Japan

もちろん、こういった賞は審査員の方が決めることなので、自分の好みとマッチしない部分があります。ワインのパーカーポイント*3も、ある程度の偏りがあると言われています。ですから「誰が審査するか?」「どういう点を評価するか?」が大事ですね。

【東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)について】

コンペティション関係の新しい動きとしては、土屋守さん主催の「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)」というのも3月に行われます。

tokyowhiskyspiritscompetition.jp

今回のTWSCは審査員数が180名もいらっしゃるということです。スピリッツも審査するので大人数になるとは思っていたのですが、 ちょっと予想以上でした。

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そのなかでも、90名以上もいらっしゃる「ウイスキーレクチャラー」については「ははあ、こういう感じでレクチャラーを活用するのか」と感心しました。

交通費も負担されるようですし、すごいことだと思います。

mtsuchiya.blog.fc2.com

その一方で、ウイスキーと他のスピリッツ、例えばウォッカやジンの審査は別物だと思うので、このあたりの采配は難しいところですね。もちろん、このあたりの話は土屋さんも考えていらっしゃるようですし、楽しみなところです。

【最後に】

実は、この1週間は次から次へと仕事が降ってきました。先日は久しぶりに徹夜仕事も経験しました。

それでも、やっぱり適度な息抜きは必要なので、ロゼ・シャンパーニュの会に参加して英気を養うなどしていました。

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それでもやっぱり、ウイスキーが飲みたくなるんですよね。シャンパーニュの会でも、最後にバーボンをオーダーしました。

いいですよね、ウイスキーって。*4

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次の日曜日には、ウイスキーラバーズ名古屋がありますね。私もひっそり参加する予定です。それを楽しみに、今週の仕事を頑張ろうと思っています。

ラバーズ名古屋に行かれる皆様、顔も名前も存じ上げませんが、同じ時間を共有できることを心から楽しみにしております。

では、本日は、このあたりで失礼させていただきます。 

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【参考とした資料、Webサイト】

*1:ピュアモルト表記についてはカーデュに端を発したスコッチウイスキーの規則改変の歴史がありますが、ここでは省略します

*2:The Proud Whisky ―富士御殿場蒸溜所【後半/全2回】 | WHISKY Magazine Japan

*3:パーカーポイントは、ロバート・パーカーJrさんが100点を満点として、ワインを点数評価するものです。例えば「PP98」であれば、「パーカーポイント 98点」です。

*4:ちなみに、オフライン上でも親交のある方に「まさか、ここまでウイスキー好きだとは思っていなかった」とびっくりされました。