琥珀色の研究 -A Study in Amber-

( ・x・)<琥珀の沼で泳ぐ「ぱさぱさ」です。ご一緒にいかがですか?

ブラックニッカ ブレンダーズスピリット Bottled in 2016

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BLACK NIKKA
BLENDER’S SPIRIT
60th ANNIVERSARY(Bottled in 2016)
容量:700ml
アルコール度数:43%
最低熟成年数:不明
種別:ブレンデッドウイスキー
国:日本

【香り】

刺激はほとんど感じず、全体的には芳醇な香り。グラスに注いだ直後は、少し甘酸っぱさを感じるドライフルーツのような香り。アプリット。洋菓子をイメージするような濃厚な甘さを感じる。

時間が経つことで、蜂蜜のように濃厚な甘さをイメージさせる香りが広がる。強く嗅ぐと、奥の方に素朴な麦のような香りを感じる。

わずかに若さを感じるものの、上記のような甘やかな香りがカバーしてくれるため、気にならない。普段飲むぶんには、全く問題ないだろう。

【味わい】

少し粘性を感じる口当たり。しっかりとした甘さを感じるため飲みやすい。公式テイスティングでは「チョコレート」の香りとあるが、ビターチョコレートというよりも、ややミルキーで甘いチョコレートの香りが広がる印象を受けた。

余韻は程よい甘さとともに、柔らかな渋みを感じる。また、ピートがじんわりと口内に広がっていく。

少量加水で、スモーキーな香りが強く主張するようになる。加水については、バランスが難しく、多様な原酒が複雑に絡み合っていると感じた。自分が好みの地点を探ると良いだろう。

オンザロックでは、香りはドライな要素が強くなったが、その反面、味わいはスモーキーさが強く主張するようになった。オンザロックというよりも、氷を少し加える程度の方が良いと感じた。

ハーフロック*1では魅力が失われてしまったと感じられたので、そのまま炭酸で割ったところ、逆に食中酒として楽しめるようになったと感じた。

【備考】

花粉症の症状が出ており、本調子ではありません……。大丈夫だとは思いますが、普段と感覚が違う可能性もあります。

また、想像以上に酔いの回りが早く、どうにも写真が汚くなってしまいました……ごめんなさい。

【もう少し詳しく】

税別2500円で発売されたブレンダーズスピリット。この価格帯のブレンデッドは、ともすれば焼酎的な香りを纏っているものも少なくありませんが、2000円台としては破格の美味しさです。さすがはニッカさんと言うべきでしょうか。

そんな素敵なブレンダーズスピリットは、2016年11月に発売されました。この年はブラックニッカの発売60周年で、それを記念して発売されたのでした。

ちなみに、2017年に再販されたものは「Bottled in 2016」ではなくて「ANNIVERSARY」と書かれています。有名ですね。

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話を戻します。ブレンダーズスピリットの主な構成原酒について、ニッカの方に伺ったところ、以下の通りでした。*2
  1. 1956年*3蒸留の余市原酒
  2. 余市蒸溜所で造られた新樽原酒
  3. 宮城峡蒸溜所で造られたシェリー樽原酒
  4. 宮城峡蒸溜所で造られたカフェグレーン
  5. 西宮工場で造られたカフェグレーン*4
もっとも、発売前には「ニッカさんブラックニッカのシリーズ出しすぎじゃない?」みたいな声も上がっていました。

それに加えて、ブレンダーズスピリットの販売本数が144,000本*5だったということもあり、「微妙かもよ……?」という下馬評もありました。

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実は、私も大きく期待はしていませんでした。「なんかすごい感じに言ってるけど、結局はブラックニッカでしょ?」と思い込んでいたんですよね。それでもまあ、往年のニッカファンですし、とりあえず何本か買ってきたわけです。

そして、見事なカウンターパンチを喰らい「ニッカさんすみませんでした!」とお詫び申し上げた次第です。

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飲み方については、やっぱりまずはストレートでしょう。刺激も強くなくて、とても飲みやすいです。

若さもチラリと感じるものの、甘くて芳醇な香りがカバーしてくれます。シェリー樽原酒と長熟グレーンが良い仕事をしていると感じました。

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「ちょっと甘いかも」と感じた方は、少量加水がオススメです。数滴垂らすことでスモーキーな面が浮き出てきました。

オンザロックで飲む場合、溶けだす水の量は多くないほうが良いと思います。私は市販の氷を使いましたが、大きな氷をポンと1個入れるぐらいで良いと感じました。また、グラスをしっかりと冷やしておく、という工夫も良いですよね。

なお、オンザロックがお好きな方も、ストレートでグラスに注いで香りを楽しむことをオススメします。飲み方の好みは個人差が大きいことは承知しているのですが、BSの香りはやっぱり良いです。*6

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ちなみに、スモーキーな部分が苦手な方は、いっそのこと、もっと加水してハーフロックにしてしまうと良いでしょう。

ただ、先に述べた通り没個性的になるので、好みが分かれると思います。

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それならいっそのこと、そのままソーダで割ってみるのはどうか?と思ったので、やってみました。

ちょっと甘い感じですが、柔らかいピートと香りのよさが活きていますね。ホットドッグ、それもスモークしたソーセージを挟んだヤツを齧りながら、グビっと飲みたい気分に駆られました。

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ただ、ウイスキー単体を味わうのであれば、ちょこっとだけ加水して飲むが好みでした。是非、色々な飲み方をお試しいただければと思います。

【ブラックニッカについて】

ブラックニッカの蘊蓄については、オフィシャルサイトにしっかりと掲載されているのでリンクを貼ります。今回はブレンダーズスピリットに関連する部分を抜粋しつつ、私見を書き加えていきます。

詳細を知りたい方は、是非下記リンクから公式Webサイトに飛んでください。

www.nikka.com

ブラックニッカの誕生は1956年6月です。今でこそ日本の製品は高品質と言われていますが、当時の日本製品はまだまだ「安かろう悪かろう」という感じだったそうです。*7

それはウイスキーも例外ではなく、例えば、主流となっていたのは「2級」ウイスキーでした。これは、大部分がウイスキー以外のモノで占められており、ウイスキーの名を冠しているものの、別物のお酒でした。

amberlover.hatenablog.jp

それに対して、初代ブラックニッカは「特級」でした。「特級」は1953年から新設されたランク*8で、2級とは原酒使用料が大きく異なっていました。

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1956年当時、ニッカが所有している蒸留所は余市のみだったことから「余市の力強く重厚な個性が際立つ味わいだった」そうです。*9

残念ながら、私は初代ブラックニッカを飲んだことがありません。ただ、「初号ブラックニッカ復刻版」は買いました。

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この「初号ブラックニッカ復刻版」は、2015年1月に限定発売されたもので、初代ブラックニッカを再現しているとのことです。詳しいことは、あらためて後日に書きますが、「ははあ、こういう感じだったのか」と興味深かったです。

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その後の歴史は公式Webサイトをご覧いただくとして、60年の歳月を経て爆誕したのが「ブレンダーズスピリット」だったわけですね。

これを3000円未満で販売できたのは、ブレンダーさんの力はもちろん、蒸留所の方をはじめ、多くの方の努力があったのでしょう。「スピリットオブニッカ」と名付けても良かったのかもしれません。

ブレンダーズスピリットを含めた限定発売のウイスキーは、人々の耳目を集めました。そして、「初号スーパーニッカ復刻版」のように評判の良いものもあったことから、皆さん、そちらを購入されることが多かったですね。

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その一方で、こうした限定発売ウイスキーの陰に、あるウイスキーが隠れてしまうかたちになりました。そのウイスキーは……そうです、終売が取りざたされている「ザ・ニッカ12年」です。

【ザ・ニッカ12年との競合について】

ザ・ニッカ12年は、人気が定着しませんでした。*10ただ、ウイスキー自体のポテンシャルは高く外装も豪奢なので、ギフトに最適だと思ってきたし、Twitterでも推薦したことがあります。

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人気が定着しなかった理由は色々あると思います。詳細は、あらためて別にまとめますが、最終的には「3000円で買えるブレンダーズスピリットと競合してしまった」という点が大きいでしょう。

ザニッカ12年は発売当初の販売価格が4000円後半、その後に価格が引き上げられ、結局5000円台後半となりました。

これに対して、ブレンダーズスピリットの販売価格は2000円台後半。「ザニッカ12年を買うならBSを2本買うよね」という雰囲気は確かに存在していました。

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実は、ザ・ニッカも記念ボトルです。創業80周年と竹鶴政孝の生誕120周年を記念して2014年にリリースされました。

創業70周年と比べて、かなり気合が入っていたと思うのですが……。このまま終売となったら、ちょっと切ないですね。

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【最後に】

最近はともかく、一時期のニッカさんは、ともすれば「いよっ!ブラックニッカヤ!」みたいな掛け声が飛びかねないぐらい、ブラックニッカを連発していました。

私も「頑張れ、ニッカさん!」と思って買い続けてきたのですが、もともとたくさん飲めるほうでもないので、「エクストラシェリー」以後は脱落してしまいました。無念です。*11

sp.asahibeer.co.jp

ブレンダーズスピリットみたいなスゴいものはともかく、ブラックニッカ8年ぐらいのものが普通に買えたら嬉しいのですが、現状は厳しいのでしょうね。

とは言え、最近は慣れてきて「仕方ないか、他にどんな美味しいウイスキーがあるかな?」と発想を転換するようになりました。

世の中には、まだまだ美味しいウイスキーがあります。頑張って長生きしなければいけないと思いつつ、本日はこのあたりで失礼させていただきます。

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※2月22日に「猫の日」ということで、ウェットフード(特盛)をあげました。ご満悦なキルシュさんです。

【参考にしたサイトおよび書籍】
  1. ニュースリリース 2016年9月29日|アサヒビール
  2. ブラックニッカ | ウィスキー・ブランデー | 商品情報 | アサヒビール
  3. 『ワイナート2012年1月号別冊 ウイスキー基本ブック』著:ワイナート編集部 出版:美術出版社
  4. 『ヒゲのウヰスキー誕生す』著:川又一英 出版:新潮社
  5. ハーフロック ウイスキーのおいしい飲み方 ウイスキー入門 サントリーウイスキー

*1:ここでの「ハーフロック」は水:ウイスキー=1:1のオンザロック

*2:「主な構成原酒」なので、他にも色々あるとのことでした。

*3:1956年はブラックニッカ誕生の年です。

*4:西宮工場では、1999年までグレーンを作っていました。その後、生産設備は仙台工場に移設されました。今回は、最長で25年以上熟成された原酒を使っているそうです。

*5:12本入りケースが12,000箱出荷されました。=144,000本という計算です。詳しくは、こちらをご覧ください。ニュースリリース 2016年9月29日|アサヒビール

*6:先にグラスにBSを注いでから氷を入れていただく、というのはいかがでしょうか……?

*7:私が物心ついたころには、かなり品質も上がっていました。ただ、両親や祖父母からは様々な「すぐ壊れる」エピソードを教えてもらいました。

*8:この時代のウイスキーは「雑酒」扱いでした。ですから、ここでいう「特級」は「雑酒特級」となります。「ウイスキー特級」となるのは1962年の酒税改正以後となります。

*9:ニッカさんの所有蒸溜所を調べていくと「1963年以前のグレーンは、どうやって調達したのかな?」という謎が浮かびます。でもまあ、今回は本題から外れるので触れません。

*10:「あん?ザ・ニッカ12年の人気が定着しなかった?俺は好きだぜ!」という方もいらっしゃるとは思いますが……。

*11:ただ、ブラックニッカの連続リリースについては「缶コーヒーじゃないんだから、そこまでとっかえひっかえ出さなくても……」という、ちょっと複雑な気持ちもあります。