琥珀色の研究 -A Study in Amber-

( ・x・)<琥珀の沼で泳ぐ「ぱさぱさ」です。ご一緒にいかがですか?

カスクストレングスについて

はじめに

 アルコール度数の規定等については「アルコール度数について」にまとめましたが、ここでは「40%だの43%だの、そんな度数じゃ物足りねぇ」という方に向けて、カスクストレングスの魅力に焦点を当てて書きました。

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 カスクストレングスとは

 スコッチの樽詰め度数は一般的に63.5%*1だそうですが、年数の経過に伴い、原酒が揮発したり樽に染み込んだりするので量は減っていきます。また、多くのウイスキーは樽からビンに詰める時に水を加えます。そのほうがたくさんのウイスキーを売れますよね。

 しかし、なかには水を加えず樽出し原酒とでも言うべきウイスキーもあります。この樽出し原酒が「カスクストレングス」です。加水しないので、ビンに詰められる量は少なくなります。そのため、価格設定は高くなりますが、相応の価値はあると思います。

 流通本数を調べたわけではありませんが、カスクストレングスのウイスキーは、ボトラーズブランドに多い印象です。また、こだわりをもってカスクストレングスにしているボトラーズブランドもあります。

BLACKADDER RAWCASK

 カスクストレングスのウイスキーは色々ありますが、BLACKADDERというボトラーズブランドの「RAW CASK(ロウカスク)」シリーズは、特にこだわりを感じます。

f:id:pasapasadayo:20180206153828j:plainBLACKADDER RAW CASK
Port Charlotte(Bruichladdich) 
15yo(2001年12月-2017年5月)
SHERRY CASK

 もっとも、ラベルに表示されている「NO ADDED COLOUR(着色していませんよ)」「NO CHILL FILTRATION(冷却濾過していませんよ)」は、最近では決して珍しいとは言えません。「オフィシャルとボトラーズ」でシグナトリーのボトルで触れたとおり、他のボトラーズブランドでも、よく見かけます。

 では、ロウカスクシリーズのこだわりポイントは何なのか?それは、樽由来の大きな木片を取り除く以外、そのままの状態でボトリングしていることです。

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 黒いものはグラスの汚れではなく炭なんです。チャー*2した表面部分が樽から分離したんですね。

 このボトルを「ゴリラ系シェリー」表現されている方がいて、私も「然り!然り!然り!」と思いました。また、テイスティング用語の「ゴムっぽい」という表現を理解できたのは、このボトルのおかげです。

開栓直後は「ひええ、これ何?この先どうなんの?最後まで飲めるの?」という感じでしたが、徐々に開花してきています。加水しないほうが好みですね。まだまだ長いおつきあいになりそうな、楽しみな一本です。

 ちなみに、私はボトラーズのなかではシグナトリー、ケイデンヘッド、G&Mあたりはちょこちょこ飲んでいたものの、ブラックアダーについては飲んだ経験は少ないです。詳しい方は他のボトルについて教えていただければ嬉しいです。

時間をかけてゆっくりと

 ここは個人の主観100%の話です。事実も根拠もありません。私の好みとも言えます。私は、カスクストレングスのウイスキーは、香りを確かめつつ、時間をかけて少しずつ飲んでいったほうが良いと思います。

 というのも、カスクストレングスのウイスキーは、グラスに注いだ直後はアルコールの刺激が強く、香りや味わいの色々な要素が隠れてしまっていると思います。

 上に挙げたブラックアダーのポートシャーロットも、時間をかけて飲んだ方が良いボトルだと思いますし、私が大好きな花と動物のカスク版ローズバンクも、1時間ぐらいじっくり時間をかけて飲んでいくと色々な要素が顔を出して、とても幸せでした。

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 このローズバンクは2回飲む機会に恵まれましたが、1回目はハーフ15mlだったこともあり、早めに飲み終わってしまいました。とても美味しかったのですが、もっと変化が楽しめるはずだと感じたので、2回目はシングル30mlをゆっくり飲みました。

 すると「あらら、最初の感じと全然違うじゃん」と驚きました。変幻自在とまでは言いませんが、ミント、干草、麦芽など豊かに変化していく様子は、なんというか、最初は態度が硬かった転校生が、徐々に打ち解けていくことで色々な顔を見せてくれるような感じです。

 そういうわけで、カスクストレングスのウイスキーは時間をかけてゆっくりと飲んだ方がオススメだと私は思っています。

 水を飲むことをオススメします

 ところで、カスクストレングスを飲むということは、加水してあるウイスキーを飲んだときよりもアルコール摂取量が増えることになります。少し前に「オレ、水は飲まないから」と言っている方と立て続けに数名お会いしました。

 最後は個人の自由だと思います。でも、私は水を飲むべきだと思うし、水を飲んでいます。というのも、お酒を飲んだ時は水分が必要になるからです。

 水分が必要な理由は2つあって、1つは「アセトアルデヒド」という二日酔いの原因となるものを排出するため、もう1つはアルコールを分解する際に水が必要だからです。

 お酒の飲み過ぎは最悪のケースでは死に至るので、酒造メーカーは啓発に力を入れていますね。キリンの説明がわかりやすかったので、ご紹介します。

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www.kirin.co.jp

おわりに

 カスクストレングスの勢いは良いものです。私もなんだかんだ言って、結構カスクストレングスを選ぶ傾向があります。そのときは、できる限り水を飲むように心がけています。

 警察官の知人は「酔っ払いは怖い」と嘆いていました。詳しく語りませんでしたが、どうも失明しかかったそうです。「お前も気をつけろよ」と言われましたが、確かに私も飲み過ぎて迷惑をかけてしまったことがあって、今はとても気を付けています。

 たくさん飲もうとせず、長い時間をかけて一杯を味わう。すごく贅沢な楽しみ方ができるのがカスクストレングスの大きな魅力だと思います。

*1:ウイスキーコニサー資格認定試験教本2015上巻』

*2:樽の内側を焦がすことです