ゴーステッドリザーブ 21年 ウィリアム=グラント&サンズ
Ghosted Reserve
21 Year Old (William Grant & Sons)
最低熟成年数:21年
容量:700ml
アルコール度数:42.8%
国:スコットランド
種別:ブレンデッドウイスキー
【香り】
少し熟れたバナナのような甘くクリーミーな香りから、南国系の粘度が高いフルーツを想像した。強い甘やかな香りはトフィーを想起する。少し時間が経つと、グレープフルーツや甘夏の皮のような苦味のある柑橘系を思い浮かべる香りも感じた。淡い木のニュアンス。全体的に暖かで明るい印象を受けた。
【味わい】
非常に柔らかくフルーティー。ただ、香りとは少し系統が異なり、南国系というよりもベリーのようなフレッシュな甘さを感じる。
舌の上を転がすと、少しビターな穀物らしさが感じられる。ここに、ジンジャーのようなスパイシーさが加わる。時間が経つことで、暖かみを感じる柑橘系のニュアンスやバニラの甘やかな要素が加わる。
余韻の長さは中程度か。シロップのような強い甘みが続くが、べたっとしたものではない。その甘みが消えると、木とともに茶葉のような香ばしさも淡く感じた。
【もう少し詳しく】
ゴースト。
良い響きですね。疼きます、すごく疼きます。
「そうしろって囁くのよ、私のゴーストが。」 *1と一度は言ってみたいのですが、使いどころが難しいです。
すみません、前置きが長くなりました。この「Ghosted Reserve」シリーズは、ウィリアム=グランツ社が販売した商品で、今回の21年は第2弾となります。
コンセプトは、インヴァーリーブン、レディバーン、ダンバートンという今は無き蒸溜所の原酒を混ぜて熟成させたブレンデッドウイスキーというものです。
閉鎖蒸留所の原酒を使っていると謳うだけあって、箱が大きくて冊子もついてきます。
まず、このブレンデッドウイスキーの目玉は、何と言ってもレディーバーンでしょう。最も出会いにくいはずです。というのも、レディーバーンは1966年から1975年までの9年間のみ稼働していた蒸溜所です。場所は、ローランドのガーヴァン蒸溜所の敷地内。ガーヴァン蒸溜所と言えば、今はアイルサベイ蒸溜所も稼働していますね。
ボトラーズブランドだと「エアシャー」名義で販売されていたりしました。ただ、今となっては出逢おうと思ってもなかなか出会えません。そして、出会ったとしてもべらぼうに高いです。
例えば、リカマンさんのWebショップを覗いてみると、レディバーン41年(40度加水)があります。お値段なんと27万円。私には手が出ませんが、しっかり売り切れています。すごいですねえ。
次にインヴァーリーブン。これは過去にまとめたことがあります。1938年から1992年まで存在したローランドの蒸溜所で、後述する通りダンバートンの敷地内にバランタインの原酒用に建てられました。
私が持っているボトルは40度と度数も低い(?)ので、するするっと楽に飲めちゃいます。ちょっと疲れた日にはもってこいなウイスキーです。
ひと昔前は知名度も高くなかったせいか、閉鎖蒸留所なのに割と手軽に買えました。マキロップスチョイスだと5000円ぐらいで買えたのかな?
でも、最近は高騰しているようですね。
ちなみにGoogleMapで調べると「The Lost Inverleven distillery」と表示されました。写真でみると、既に何もないことがわかります。
最後にダンバートン。上でも書きましたが、この中にインヴァーリーブン蒸溜所が建てられました。したがって、上の地図の通り建物は残っていません。
こちらもバランタインの原酒として使用されていたグレーンウイスキーですね。蒸溜所が建てられたのは1938年……と、ここまで書いたところで「バランタインと言えばサントリーさんのページに纏めてあるんじゃない?」と思いつきました。
で、調べたところ、ありました。なんと、『ザ・スコッチ―バランタイン17年物語』という冊子の内容を掲載してくれていました。
第15章 GRAIN WHISKY グレーンウイスキー
https://www.suntory.co.jp/whisky/Ballantine/chp-15.html
『ザ・スコッチ―バランタイン17年物語』
(グレアム・ノウン著、マイケル・ジャクソン序、田辺希久子訳)
読んでいると「あれ、稼働しているかのような書き方だな?」と思ったので発売日を調べると、1996年の6月でした。ダンバートンの稼働終了は2002年なので、この本が出版された時点では、まだ稼働していますね。
ゴーストについて
ところで、ゴーストといえばこんな本があります。
これがなかなか面白いんですよ。セールスコピーは、こんな感じです。
英国人は歴史好き、しかもゴースト(幽霊)好き。「幽霊の出る」不動産はそれだけで価値を上げ、幽霊めぐりのツアーも多い。ゴースト伝説を道案内に、一見とっつき難い英国史を見直してみると……。
目次はこんな感じです。「愛されるゴースト」って、なかなか興味を惹かれるものがあります。
プロローグを読んで「へえ」と思ったのが次の箇所です。
イギリスのゴーストは基本的にはキリスト教的なゴーストである。カトリックでは、ゴーストとは煉獄の住人とされる。
(中略)
しかし知っての通り、イギリスでは(略)カトリックは排除されてしまった。
(中略)
一般に、プロテスタントのゴーストは悪魔に近い存在とされ、人間に危害を加える恐ろしいものとみなされる傾向が強い。ところが、イギリスのゴーストは大部分がひとびとに愛される存在なのである。
西洋史の知識なんて私はほとんど持ち合わせていませんが、やっぱりこういう文化背景も知っておくとウイスキーを一層楽しめると思います。
まとめ
最後に、総評みたいなものを書いておきます。
たぶん読まれている方が思うのは「で、閉鎖蒸留所の原酒を混ぜて美味いの?」とということでしょう。
私は美味しいと思います。何と言うかローランド主体らしいとでも言うのか、柔らかくて暖かみのある上手なブレンデッドウイスキーだと思います。ちょっと甘みの強さが気になる方は、オンザロックで飲んでも美味しいです。
ただ、私は神の舌のような繊細な味覚の持ち主ではないので、「ペロ……これは……レディーバーン!!!!!」*2と言うことはできません。
ブラインドで出されたら「クリーミーなブレンデッドですねー。美味しいですねー」ぐらいしか言えないと思います。
個人的には、レディーバーン、インヴァーリーブン、ダンバートンとともに飲み比べてみたいですね。
私が飲めなくても、そんなことができるお金持ちの方がいらっしゃれば、是非とも感想を聞かせていただきたいなあと思いつつ、本日はこの辺で失礼します。