琥珀色の研究 -A Study in Amber-

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ウイスキー用語の備忘録 サイトグラス~ソレラシステム

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自分の備忘録も兼ねたものです。気力と体力があるときに、随時更新していきます。趣味で書いているので、不十分な点もあります。

【お願い】

用語については書籍等で調べつつまとめていますが、私は専門家ではありません。そのため、活用される際は、必ずご自分で意味等をご確認ください。

参考書籍やWebサイトも挙げているので、そちらをご参照ください。宜しくお願い致します。

<サ~>

サイトグラス

蒸溜釜につけられている小さな窓です。蒸溜する際に、熱で泡立つモロミの状態を監視するためのもので、泡立ちの激しい初溜釜に取り付けられていることが多いです。

ちなみに、一時期のコニサー認定試験ではサイトグラスに関する問題が頻出していました。

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サワーマッシュ方式

バーボンを生産する際に仕込み水にバックセット(蒸溜残液)の一部を加える製法で、雑菌の繁殖を防いだり糖化条件を向上させたりする目的があります。バックセットの割合や加え方は、生産者によって異なります。

なお、サワーマッシュ法は1820年1830年代にかけて開発された手法であると言われ、それまでは「スイートマッシュ方式」と呼ばれる手法が用いられていました。

<シ~>

シーズニング

様々な意味がありますが、ウイスキーに関しては、ほぼ「シェリー樽のシーズニング」という意味合いで語られます。

ウイスキーを熟成させる前提で造った樽に「シェリー」を入れて、数年寝かせて馴染ませます。シェリー業者に依頼し、シェリー樽を調達するという方法で味を維持しています。

中に入っているものが「シェリー」なのか?という点も含めて、様々な角度からの議論が尽きないテーマです。

シェリ

スペインのアンダルシア地方ヘレス周辺で造られている白ワインの一種で、酒精強化ワインに分類されます。正式なD.O.名称は「ヘレス-ケレス-シェリー・イ・マンサリーニャ-サンルーカル・デ・バラメーダ」です。

これを名乗れるのは、以下の3つの町を結んだ域内で熟成されたもののみです。

  • ヘレス・デ・ラ・フロンテラ
  • サンルーカル・デ・バラメーダ
  • エル・プエルト・デ・サンタ・マリア

使われているブドウは3種で「パロミノ」、「モスカテル」、「ペドロ・ヒメネス(PX)」ですが、パロミノの使用率が圧倒的に高く、約95%を占めています。

最低熟成年数は2年ですが、伝統的には3年の熟成期間で、ドライなものから極甘口まで様々なタイプが存在しています。

シェリー樽

1700年代後半にスペイ川流域でウイスキーの密造が盛んになったころは、ウイスキーの隠し場所として空のシェリー(オロロソ)樽が使われていました。その結果、とても美味しく変化したことから熟成という概念も育まれていき、現在に至ります。

なお、現在はウイスキー用の樽を作るために「シェリー」を入れることもあります。ただ、この「シェリー」についてはウイスキー製造用ということもあり、原産地呼称制度の基準を満たしているか否かも含めて賛否両論があります。

シェリー樽の樽材

樽材については様々な議論があり「スパニッシュオークを使っていますよ」という話も見聞きしますが、SherryMuseum館長の中瀬航也さんは、著書『Sherry Unfolding the Mystery of Wine Culture』で、製樽業者の仕事内容やスパニッシュオークの特性について触れられたうえで、「シェリー、シェリー・ブランデー、シェリーヴィネガーには、すべからくアメリカン・オークのみが用いられます」とされています。

なお、稲富博士のスコッチノート [Ballantine's]でも「クーパーがこれらのオーク材を産地別に評価した順位は、アメリカ産、北ヨーロッパ産、イタリア産の順で、スパニッシュ・オークの評価は低くかった。(原文ママ)」とされています。

シャーロックホームズ

英国の医師にして小説家のアーサー=コナンドイルが19世紀後半に創作した、シャーロック・ホームズシリーズの主人公です。世界で唯一の「顧問探偵」(consulting detective) とされています。

世界中で愛され、子孫がいたり女性になったりしていますが、もともと下宿先で化学実験をやったりいきなりバイオリンを弾き始めたり壁に銃弾をぶっ放したり麻薬を愛好していたりするなど、非常な個性的な人物です。

ただ、数多くの芸事に秀でており、相棒のジョン=ワトソンを心から信頼するなど、感性豊かな人物でもあります。

ガソジンでウイスキーソーダを飲む場面が見られ、当時からウイスキーが普及していたことが伺えます。詳しくは過去記事をご参照ください。

amberlover.hatenablog.jp

熟成

ウイスキーは原酒を樽に入れることで、原酒が樽の影響を受けて美味しくなります。香りの6割が樽熟成に由来するといわれており、大切な工程です。樽の保管方法はダンネージ式やラック式、パラタイズ式があり、蒸溜所によって異なります。

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熟成はウイスキーを名乗るための条件として、多くの国で定められています。例えばスコッチウイスキースコットランド内の保税倉庫で樽に入れて3年以上熟成させる必要があります。

なお、気候風土のため、一般的にスコッチウイスキーよりもアメリカンウイスキーのほうが熟成が早く進むと言われています。

熟成させる樽

ウイスキーを熟成させる樽は、各国で様々な定義があります。例えば、バーボンウイスキーは内側を焦がしたオーク樽の新樽で熟成させることが求められるし、ストレートコーンウイスキーは古樽か、内側を焦がしていないオークの新樽で熟成させる必要があります。

スコッチウイスキーは、長らく樽について「700リットル以下のオーク製の樽を使用してね」という定義だけでしたが、2019年に動きがありました。「古樽を用いる場合には、オーク製の樽に加え、以前にどんな種類の酒が入っていたのかも規定するよ」という動きです。

これにより、カルヴァドスカスクテキーラカスク、焼酎カスクなど広範囲な蒸溜酒の樽の使用が公に認められることになった一方で、シードルカスクのように使えなくなったものもあり、賛否が分かれています。

ちなみに、2019年現在でジャパニーズウイスキーには樽に関する定義がありません。

熟成年数表記

ウイスキーの多くは、複数の樽の原酒を混ぜ合わせて製品化されます。製品の中味が熟成年数の異なるウイスキーで構成されている場合には、最も若い原酒の年数を表記する必要があります。

例えば、12年熟成原酒、15年熟成原酒、30年熟成原酒をブレンドした場合は、12年表記となります。

年数が経てば経つほど経費が増加すること、エンジェルズシェアでボトリングできる本数が減ることから、表記年数が大きくなると高価になりやすい傾向があります。

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酒精強化ワイン

「アルコール度数を高めたワイン」という意味で、フォートファイドワインとも呼ばれます。

ベースワインにブランデーを添加することで味にコクを持たせると同時に、微生物の活動を止めて劣化を防ぎます。大航海時代に、真水の代わりに積んだワインを劣化させないために編み出された技術だったのではないか、と言われています。

最終アルコール度数やブランデーを添加するタイミングは、種類によって異なります。

酒精強化ワインの例

スペイン:シェリー、マラガ、モンティージャ・モリレス

ポルトガル:ポート、マディラ

イタリア:マルサラ、ヴィン・サント

フランス:VDR(ヴァンドリキュール)

蒸留

溶液など混合物を分離させたいときに、沸点が異なる点に着目することで分離させる方法です。ウイスキーの場合は、発酵後の液体を蒸溜して高濃度の酒にします。

ウイスキーづくりのシンボルとも言える「単式蒸留器(ポットスチル)」は、蒸溜のためのものです。ただし、地域や種別によっては単式蒸留器だけでなく「連続式蒸留器」も使われます。

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蒸溜釜

一般的にはポットスチルと呼ばれることが多いです。蒸留器と言った場合は連続式蒸留器も候補に挙がります。

形状はランタン型やバルジ型、ストレート型など様々です。初溜釜と再溜釜では、釜の形やサイズが異なる場合が多く、通常は溜液が多い初溜釜の方が大きくなります。

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材質は銅が用いられることが多く、その理由として、加工が容易で熱伝導率が高いことに加え、硫黄化合物を取り除く触媒の効果がある点が挙げられます。そのため、使っているうちに銅がだんだん薄くなってきます。

薄くなった部分はパッチワークのように修理しながら使っていき、総耐用年数はサントリーさんによると20年くらいだそうです。

蒸溜所

ウイスキーの蒸溜工場のことです。仕込みに使う水が大量に必要となるので、歴史的には湖や川の近くに造られることが多かったです。

また、熟成を行うためには冷涼な地域が望ましいとされてきましたが、KAVALANのように科学技術を活用することで激しい寒暖差をカバーする蒸溜所も出てきました。

ちなみに私は白州蒸溜所が好きです。

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ショコラ

チョコレート、またはココアを表すフランス語ですが、日本では一般的にチョコレートを指します。板チョコやリキュール入り、リアルなゴリラなどの動物や綺麗な惑星まで、多種多様です。

ウイスキーのおつまみとしても美味しいですが、ラムやブランデーなどと合わせても美味しくいただけます。 

amberlover.hatenablog.jp

シングルグレーンウイスキー

一つの蒸溜所だけで造られたグレーンウイスキーです。あまり馴染みが無い言葉ですが、サントリーさんの「知多」は「知多蒸溜所(旧サングレイン蒸溜所)」で作られているシングルグレーンウイスキーです。

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シングルモルトウイスキー

単一の蒸溜所でつくられたモルトウイスキーをボトリングしたものです。ですから、「シングルモルトウイスキー山崎」には、山崎蒸溜所でのみ造られた原酒が使われています。

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<ス~>

スコッチウイスキー

スコットランドで造られたウイスキーで、名乗るために細かな法定義が成されています。2019年には熟成に使用される樽の種類が厳格化されました。

その結果、カルヴァドスカスクテキーラカスク、焼酎カスクなど広範囲な蒸溜酒の樽の使用が公に認められることになりました。ただ、その一方でシードルカスクなど使えない樽も規定化されたため、賛否両論みられます。

スマグラー

税金を納めずに酒を密造していた人々です。要するに犯罪者ですが、ウイスキーの歴史は密造と切っても切れない関係があります。

昔は税金が高かったり祖国が併合された怒りがあったりしたことから「そんな法律なんて守ってられるかよ」みたいな雰囲気があったようです。

ちなみに、日本では明治時代に近代的な酒税法が制定されましたが、徴税官が殺される事件も発生していました。宮沢賢治の『税務署長の冒険』は長くないので、是非読んでみてください。

https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/1941_17444.html

スペイサイド地区

スコットランドウイスキー生産地を区割りする際に、ハイランドのなかでも、特にスペイ川流域を「スペイサイド」と呼ぶことが多いです。

豊富な水とピートに加え、地形が険しいことから18世紀には密造蒸溜所が密集しており、今でも数多くの蒸溜所が稼働しています。

なお、「スペイサイド蒸溜所」もありますが、こちらは北ハイランド地区に分類されています。

スラーンチェヴァー

ゲール語で乾杯の音頭をとる際の慣用句です。「Slàinte Mhath」と表記され、字義通りだと「健康を願って!」となります。

日本では「スランジヴァー」と表記されているのを見かけますが、日本スコットランド協会の記事で「スラーンチェヴァー」と紹介されていたり、同名のロックバンドが「スランーチェヴァー」と呼ばれていることから、こちらにしました。

ただ、音声を聞いてみると「チェ」の部分が「ジェ」に聞こえる……気もします。

<ソ~> 

ソレラシステム

主にシェリーの熟成に使われる手法で、品質の均一化と熟成を同時に行うことができます。正式名称は「エル・システマ・クリアデラ・イ・ソレラ」で「クリアデラとソレラのシステム」です。

一般的には、樽を積み上げていき、最上段の樽から白ワインを注ぎ、下の樽になればなるほど熟成年数が長くなります。最下段の樽を「ソレラ」、それ以外の樽は「クリアデラ」と呼ばれます。

最終的に、最下段の「ソレラ」から取り出したシェリーのみが出荷されます。このとき減った分量は、クリアデラから補充されます。

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ただし、これは基本形であり例外もあります。また、シェリーでも、ある年の葡萄のみで造られている「アニャダ」はソレラシステムを使いません。

なお、ウイスキー業界でもソレラシステムを参考に熟成方法を導入している蒸溜所があります。グレンフィディックリザーブカスクと15年を書いたときに触れました。もし良ければ御一読ください。

amberlover.hatenablog.jp

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