「従価」表示について
「ウイスキー特級とは」で日本独自の制度について書き、その最後で「従価」に触れました。「従価」とは「従価税」を表しています。
ここでは、「従価」と酒税法について書きます。
はじめに
従価税について表示があるラベルも、いろいろな種類があります。「従価税率適用」まで書いてあるボトルもあれば、「従価」だけのボトルもあります。
では、従価税とは何なのか?まずはむかしむかしの話に戻ります。
明治時代:酒税が国を支える一方で、密造酒も。
明治維新以降、酒税は日本では大切な税収減でした。特に、自家用料酒が禁止された1899(明治32)年は、国税の税収第1位でした。
酒文化研究所
『NEWS LETTER 第 24 号 2014 年 12 月 25 日』
【制度変更】日本の酒税制度の軌跡をたどる P3L1~
http://www.sakebunka.co.jp/archive/letter/pdf/letter_vol24.pdf
ちなみに、明治初期の日本人にとって、酒は買うものではなく作るものという認識があったようです。おまけに税金がかかるとなると、やることは一つですよね。そうです、密造酒です。スコットランドでも日本でも同じことが起きました。
税務職員が負傷したり殉職したりすることもあったそうです。*1宮沢賢治の作品でも扱われています。
「木へ
吊 るせ吊るせ。なあに証拠だなんてまだ挙がってる筈 はない。こいつ一人片付ければもう大丈夫だ。樺花 の炭釜 に入れちまへ。」たちまち署長は松の木へつるしあげられてしまった。青空文庫
『税務署長の冒険』宮沢賢治
http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/1941_17444.html
従価税は右肩上がりだった
さて、「ウイスキー特級とは」の項目で、諸外国からウイスキー特級制度の評判が悪かったと書きました。その理由は、ウイスキーが二重に課税されていたからです。
1つは従量税といって、作った分だけ税金を払う制度です。もう1つは従価税といって、価格に応じて税金を払う制度です。
ウイスキーに対する従価税は特級制度と同じ1962年でしたが、税率は右肩上がりでした。というのも、バブル景気に沸いた日本では、ウイスキーの消費量が上がっていったからです。
1981年に改正された酒税法で従価税は150%、220%まで引き上げられ、隙を生じぬ2段構えでした。そう、こんな感じでしょうか。
ちなみに、1981年までにも増税が繰り返されてきましたが、これは従量税の観点からだったそうです。
大蔵省(当時)の意見を要約すると
「今まで従量税を引き上げてきましたが、物価が上がってるのに税率そのままというのは、おかしいです。国も収入が必要ですし、そもそも、ちゃんとした基準を保たないと税としておかしいですよね?そういうわけで、増税しますね。」
という感じでしょうか。*2
ジョニ黒で価格を比較しました。
実際に、「ジョニ黒」ことジョニーウォーカーブラックラベルを例に挙げてみましょう。
今となってはスーパーで3000円も出せばおつりが受け取れる価格ですが、昭和生まれの方であれば、「昔はジョニ黒が高くてなあ」なんて話を聞いたことはありませんか?私の父も「ジョニ黒は高くて買えなかった。良い時代になったなあ」としみじみ言っていました。
そんなジョニ黒を3世代にわたって比較します。
左:1982年ごろ 中:1983年ごろ 右:1992年ごろ です。
『世界の名酒事典』〈’82‐’83年度版〉、〈’83‐’84年度版〉、〈’92年版〉
最初、私も驚きました。だって、このジョニ黒が、今では2000円台になったんです。ずいぶん違いますよね。これも、他国から「日本ってウイスキーと焼酎の税率違いすぎるよね?」と言われ続けて、ウイスキー特級と従価税は終わりを迎えた結果ですね。
おわりに もう少しだけ続くんじゃ(酒税証紙について)
「ウイスキー特級」と「従価」を調べていくと、「酒税証紙」なるものを調べる必要がでてきました。これですね。
というわけで、「酒税証紙について」に続きます。