琥珀色の研究 -A Study in Amber-

( ・x・)<琥珀の沼で泳ぐ「ぱさぱさ」です。ご一緒にいかがですか?

エライジャクレイグ 12年(旧ラベル、終売品)

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ELIJAH CRAIG

KENTUCKY STRAIGHT BOURBON WHISKEY
Year 12 Old
アルコール度数:47%
容量:750ml
最低熟成年数:12年
地域:アメリ
製造:ヘブンヒル蒸溜所:http://www.heavenhill.com/

【香り】

バニラや蜂蜜をイメージする濃厚な甘い香り。少し時間が経つことで、レモンや白ブドウのようなフレッシュな香りとともに、バルサミコ酢のような酸味を感じる香りも拾える。そのほか、アニスのような甘くスパイシーな香りも淡く感じる。

しっかり嗅ぐことで、焦げた木や麦焦がしといった香ばしさも感じる。

【味わい】

度数相応のアタック。バランスが取れた味わいでアルコール感は強くない。最初はフレッシュな酸味を感じるが、徐々に甘みが感じられてくる。ただ、この甘みは、ある程度まで感じられた後で収束していき、心地よい渋味が残る。

余韻は中程度から少し長めで、ビターでカラメルのような香りが、柔らかく鼻孔に残る。同時に、蒸したコーンを練ったような香りも感じた。

少量加水でも崩れなかった。オンザロックで飲むと渋味が強く感じられたが、やはり甘みが盛り返し、バランスは崩れなかった。個人的には、ストレートとオンザロックを飲み比べることで、より一層楽しめると感じた。

【もう少し詳しく】

久しぶりのアメリカンウイスキーです。アメリカでもクラフト蒸溜所ブームだそうで、先日まとめた『バーボンの歴史』のなかでも、わざわざ「クラフト・ムーブメント」として章が一つ割かれています。

この章では長所や短所まで詳しく書かれていますが、最近の動向はこんな感じだそうです。

今世紀に入り、合衆国のクラフト蒸溜所の数は雨後の筍のように増えた。小規模の蒸留業を制限していた州や地元自治体が規制を緩和したために、2000年にはほんの数か所だったのが、2015年には600か所に迫るほどになった。

 *1

どうやら、クラフト・ムーブメントに触れずして最近のバーボンウイスキーを語ることはできなさそうです。ウイスキー文化研究所の土屋代表も「最近、クラフトが1000軒近く出てきているから追いかけきれていないんですよね」とセミナーで仰っていたこともありました。

その一方で、昔よく見たウイスキーが、ひっそりと姿を消しつつあります。今回のエライジャクレイグ12年も、その一つです。

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エライジャクレイグはバプテスト派の神父の名前で……とか書いてもいいんですが、そういう豆知識は公式サイトをご覧いただくに限ります。輸入元であるバカルディさんのWebサイトを張り付けておきます。

www.bacardijapan.jp

さて、先ほど私は「昔よく見たウイスキーが、ひっそりと姿を消しつつあります。」と書きましたが、エライジャクレイグというブランドは現存しています。

では、何が変わったのかというと年数表記です。表ラベルから「12」という数字が消えました。*2名前も「エライジャクレイグ スモールバッチ」となりました。「バーボン、お前もノンエイジか」という気持ちになりますね。

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もっとも、年数表記についてスコッチウイスキーアメリカンウイスキーとでは、異なる部分があります。その法律についても書いたのですが、長くなったので末尾に回しました。

簡潔にまとめると、ストレートバーボンと表示されていて年数表記が無い場合は、ノンエイジといっても最低4年の熟成であるいうことでした。

エライジャクレイグに話を戻します。12年表記が無くなった現行品については、8年熟成の原酒も使われているとのことです。

新しいエライジャ・クレイグは、8年熟成の原酒と12年熟成の原酒によってつくられることになる。ヘブンヒルによると、ブランドを存続させるために必要な12年熟成の原酒が不足しているという。

whiskymag.jp

もっとも、ノンエイジになったエライジャクレイグですが、「Whisky Advocate」誌*3で2017年のトップウイスキーに選出されるなど活躍しています。

詳細はリンク先を参照いただきたいのですが、モーレンジのアスターやターキーのディケイドを抑えての1位でした。

whiskyadvocate.com

ただ、そんな現行品も旧来の愛好家からは「現行品になって変わってしまった」という声も上がっています。

中身が変わったわけなので味わいも変化します。それは当然なのですが、では、どういう方向に変化したのでしょうか?

そう考えたときに、ターキーのラベル違いを飲み比べたときのことが思い浮かびました。

amberlover.hatenablog.jp

ここでは8年の飲み比べが中心でしたが、正面ターキーの12年と現行13年を飲み比べたことについて少し触れました。

13年も円やかで美味しかったものの、私は12年の方が好みだったんですよね。

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こうした変化の理由は色々もあるのでしょうが、やはり無視できないのは消費者のニーズでしょう。

例えば「アメリカではソーダとかコーラで割って飲む人が多いんです。だからプレーンな酒質が好まれるんですよね」という話を酒販会社の方から聞いたことがあって、確かにターキー8年も13年も日本限定販売です。

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こうした変化が起こっている以上、自分が好きなバーボンを「いつでも飲めるでしょ」と思っていたら、高騰したり終売したりして飲めなくなるかもしれません。

上で挙げたWHISKY Magazineさんの記事では、こういうことも書かれています。

だが現在の状況を見てほしい。ウイスキーの人気は爆発的で、かつて日常的に楽しんでいたウェラー12年などのバーボンが入手できない。フォアローゼスリミテッドエディションスモールバッチを手に入れるには、長蛇の列に並んで待たなければならないばかりか、55%も値上っている。パピー・ヴァン・ウィンクルが欲しくて酒屋に電話しても一笑に付されるだろう。

実際に、今回のエライジャクレイグ12年も、私は2000円ちょいで買ったのですが、今では5000円オーバーというのも珍しくなくなってきました。

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そんなわけで、今しか飲めないバーボンもあると考えています。そして、今のうちに色々と飲んでおかないと後悔すると思い、バーテンダーの方に色々と教えていただくようになりました。これ美味しかったです。

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オールドボトルでも、あまり情報が集まらないものは安く手に入れることもできます。こういうボトルを見つけると、ときどき買っています。

よくわからないままウイスキーを買って飲んでいた頃を思い出して、とても懐かしい気持ちになるんですよね。

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現行品だと、やはりジャックダニエルとメーカーズマークは美味しいと思います。手軽に買えるせいか軽く見られがちですが、美味しいと思うんですよね。200mlサイズが展開されているのも嬉しいです。

ちなみに、この2つは昔から流通量も多かったので、状態の良いオールドボトルも安く手に入れやすいです。

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現行品のなかでは、バッファロートレースも良いなあと思いました。取り扱いが明治屋さんからレミーコアントローさんに変わりましたが、味わいについて大きな差が出ているという話は今のところ私は聞いていません。

40%と45%バージョンがあるようで、私が飲んだものは45%でした。

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他にも、ミクターズあたりが気になるので、また今度飲んでみようと思います。15年ぐらいウイスキーを飲んでいますが、アメリカンウイスキーは初心者です。

この先、どんなボトルに出会えるのか?どんな飲み方が良いのか?本当に楽しみです。

【資料:アメリカ合衆国連邦規則集第27編】

最後に、上述したとおり資料として「アメリカ合衆国連邦規則集第27編」へのリンクを貼っておきます。PDFファイルなのでご注意ください。

https://www.gpo.gov/fdsys/pkg/CFR-2011-title27-vol1/pdf/CFR-2011-title27-vol1-chapI.pdf

膨大な量の資料を前に英語が苦手な私は怯みましたが、「ここが根拠かな?」という箇所を見つけたので貼っておきます。

  1. 52ページの「(b) Class 2; whisky」から
  2. 66ページの「§ 5.40 Statements of age and percentage.」から

このあたりの文章をGoogle翻訳さんと英和辞書に活躍してもらいながら読むと、なんとなく意味が理解できます。

  1. 2年以上熟成させると「ストレート」が表記できる。
  2. 4年以上熟成させると年数表記を無くせる。

ウイスキーについて調べていくと、英語の壁にぶつかってることが多いです。「英語の読み書きができたら便利だなあ、少し覚えてみようかな」といつも思うのですが、いつも「まあいいか」と流してしまいます。これじゃあダメだなあと思いつつも「まあいいか」と流しながら、本日はこの辺で失礼します。

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*1:『バーボンの歴史』P361(第17章クラフト・ムーブメント)
リード・ミーテンビュラー著、白井慎一監修、三輪美矢子訳

*2:現行品と今回のボトルの間に、もう一つバージョンがあります。

*3:アメリカのウイスキー専門誌