琥珀色の研究 -A Study in Amber-

( ・x・)<琥珀の沼で泳ぐ「ぱさぱさ」です。ご一緒にいかがですか?

【追記あり】ピティヴァイク(ピティヴェアック) 12年 花と動物 (終売品)

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PITTYVAICH 
AGED 12 YEARS
アルコール度数:43%
容量:700ml
最低熟成年数:12年
地域:ダフタウン(スペイサイド)
種別:シングルモルト

その他:花と動物シリーズ

 【メモ】

ウーロン茶(お茶というよりも茶葉か?)。レーズン。全体的に甘やかなシェリーの香りが強く主張する。

アタックは力強く、40%よりも強く感じたが、決して重くはない。香りと比べて味わいはスパイシーで、少し焦げ感も感じた。そのなかに、黄桃や洋梨といった濃厚な甘みも感じられた。ただ、主張は強くない。

余韻は中程度から少し長めだろう。ドライではあるものの、スパイシーな刺激が残る。

【12/31追記ここから】

なお、アルコール度数については裏側に40%と表記されていますが、表側に43%と書かれています。飲んでみると40%という感じでもないですし、誤植でしょう。

こういうアバウトな感じは、昭和らしくて懐かしいですねえ。

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【12/31追記ここまで】

【もう少し詳しく】

年末なので、一年間お世話になったバーにご挨拶へと伺いました。何か飲み比べようと思い、セントニックをオーダーしました。

一杯をじっくり楽しむのも面白いのですが、同じ銘柄を色々と飲み比べるのも楽しいですね。

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そして、次に飲んだのが今回のPITTYVAICHでした。花と動物のPITTYVAICHは、むかーし飲んだことがあって、そのときの記憶が強烈に残っていました。

今年も色々なウイスキーと出会って飲んできましたが、今回のPITTYVAICHとの再会は、本当に嬉しかったです。

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以前の私はウイスキーの香りとか味わいとか、あまりよくわかっておらず、「オレ、オマエ、スキ。オマエ、ウマイ。スゴク ウマイ」みたいな感じで飲んでいました。

もちろん、基本的なスタンスは今でも変わらなくて「これ美味しいですねー。いいですねー」とか言いながら飲んでいます。

例えば、今回マスターに勧められたピュアモルト表記のロッホローモンドも黒糖風味が感じられるなど独特で、「美味しい美味しい」と言いながら飲んでいました。

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私の話なんかどうでもいいですね、ごめんなさい。PITTYVAICHに話を戻しましょう。

【PITTYVAICHの歴史】

PITTYVAICHは1975年から1992年にかけて稼働していた蒸溜所です。場所はモートラック蒸溜所のお隣です。

モルトウィスキー・コンパニオン』に載っていた住所で検索してみると、ここですね。

ストリートビューで見てみると……草と空が広がっていました。というのも、1993年に操業停止になり、建物は2002年から2003年にかけて取り壊されてしまったそうです。

ちょっと寂しいですね。

もともとPITTYVAICHはBELL用を考えて1975年からに稼働したのですが、まさか17年で停止するとは思ってもみなかったのでしょうね。

ちなみに裏ラベルに「新しい蒸溜所」と書かれています。時代を感じますよね。

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なお、英語版のWikipediaに項目があったのでリンクを貼っておきます。情報量は多くないのですが、参照リンク先が役立つと思います。

Pittyvaich distillery - Wikipedia

【PITTYVAICHの読み方は?】

さて、タイトルを除き、ここまでPITTYVAICと表記してきました。それと言うのも、読み方について取り上げたかったからです。

最近は「ピティヴァイク」と表記するのが主流となっているようですが、私は、ずっと「ピティヴェアック」と読んできました。この理由としては、「ピティヴェアック」と表記する本を読んできたからです。

例をいくつか挙げていきます。まずは、これ。

『改訂版 モルトウィスキー大全』2002年初版第1刷 P205
著:土屋守  小学館

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あと、こういう本もあります。

モルトウィスキー・コンパニオン最新版』2011年初版第1刷
著:マイケル・ジャクソン、監修:土屋守、訳:土屋希和子・山岡秀雄

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両方とも「ピティヴェアック」ですよね。

ところが、今回のボトルの裏ラベルには「ピティーヴァイック」と書かれています。

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さらに、最近図書館から借りてきた本は、現在主流となっている「ピティヴァイク」が使われています。

『世界のウイスキー』1989年初版第1刷 著:マイケル・ジャクソン 訳:山本博福西英三 出版:鎌倉書房

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もう、どれがどれやら……という感じなので「pittyvaich pronunciation」で調べたところ、たくさんヒットしました。

PITTYVAICの語構成としては、Pittyはピクト語で「ピクト族の集落」を、Vaichはゲール語で「牛小屋」を表すのだそうで*1、どうやら英語話者の方々も「なんじゃこりゃ」となるようですね。

調べたところ、こんなサイトがありました。 

www.thespiritsbusiness.com

The ‘viach’ sound is in face a short, sharp ‘vek’ – much like the history of the distillery itself.

これによると「viach」は蒸溜所の歴史のように短く「vek」と言うんだそうですが、それならやっぱり「ピティヴェック」みたいになるのでは……?うーん。

ひとまず「ピティヴァイク」と表記しますが、すごく気になるのでディアジオの方に今度お尋ねしようと思っています。ボブさんご存知かなあ。

ちなみに、ピクト族については『The Whisky World vol.15』で4ページにわたって特集が組まれています。

『The Whisky World vol.15』P38~41 発行人:渡部里美 編集人:土屋守 発行:株式会社プラネットジアース

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内容は対談形式で、写真も多いし、宇宙人の話とかも出てくるので、わりとすらすら読めます。

あと、下の写真の"キルダントンのケルト十字"はピクトと無縁ですよ、と書いてくれているのは親切だと思いました。

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このようなピクト語やゲール語のように、英語以外の文化圏が登場すると、途端に「なんて読んだらいいんだろ」という単語が出てきます。

こうした難読蒸溜所については「GlenGarioch」が挙げられますよね。私はずっと「グレンガリオッホ」と読んできたことは、既に紹介した通りです。*2難しいですよね。

amberlover.hatenablog.jp

【花と動物について】

さて、次は花と動物シリーズについて。花と動物シリーズ(Flora and Fauna )は、ラベルに蒸溜所の説明が書かれていること、そして、蒸溜所になじみのある動植物がラベルにあしらわれていることでも知られています。

シングルモルトウイスキー大辞典』P127 監修:肥土伊知郎 出版:ナツメ社

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ピティヴァイクについては鹿ですね。ただ、これは奈良公園とかにいる鹿では無くて「ヘラジカ」という種類のようです。英訳すると「Deer」ではなくて「Elk」らしいです。

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ちなみに、この「ヘラジカ」の角のことをアントラー(antler)と呼ぶそうです。サッカーチームの鹿島アントラーズは、ここから由来しているということです。

www.canada.jp

花と動物シリーズは、ラベルにあしらわれた動植物に興味を惹かれました。コニサー試験でも、過去にアバフェルディのリスについて問われる問題が出たことは、過去に触れた通りです。

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また、花と動物シリーズは、当時としては珍しい蒸溜所のウイスキーもリリースされています。そんなわけで、昔から色々と飲ませていただいてきました。

マイナーだった蒸溜所のモルトウイスキーをリリースしたことは、花と動物シリーズの功績でしょうね。

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また、前回のローズバンクでも紹介したようにカスク版も存在しています。すっかり見なくなってしまいましたが、私はこのシリーズが大好きです。ゆっくり時間をかけて変化を楽しむ面白さは、このシリーズで理解していきました。

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なお、花と動物シリーズは2003年に終売となりました。この花動シリーズが発売される前は、なかなか手に入らなかった蒸溜所もあり、このシリーズがきっかけで注目された蒸溜所もありましたよね。そういう意味でも、このシリーズが果たした役割は大きかったと思います。

【最後に】

ウイスキーが好きな人の多くは、思い入れのある一本があると思います。私にとって、花動のピティヴァイクがその一本です。

ただ、最近は数万円まで値上がりしています。そこまでいくと、ちょっと後回しになります。この世はでっかい宝島で、まだまだたくさんのウイスキーを楽しめるチャンスが残っています。

そういうチャンスが残っているうちに、冒険してみないといけないなあと思っています。

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アドベンチャーと言えば、最近、猫2匹が家のドアを開けるスキルを身に着けてしまい、あちこち探検しています。

そのため、入ってはいけない部屋については、ドアの取っ手の向きを変えています。

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成長したなあと思いつつ、私や妻の部屋に入ると、また布を誤食してしまう可能性があるので心配です。

しっかり遊んでストレス解消させてあげないといけないので、今日は今から少し遊ぶことにします。そんなわけで、本日はこのあたりで失礼させていただきます。

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【おまけ】

異なる民族、異なる言語といえば、日本の場合は、やはりアイヌ語でしょうか。興味を持たれた方はアイヌ語について調べてみると面白い……かもしれません。私は面白いんですが、あまり賛成してもらえたことがありません。残念です。

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【参考文献】

『The Whisky World vol.15』P38~41 発行人:渡部里美 編集人:土屋守 発行:株式会社プラネットジアース

『シングルモルト&ウイスキー大辞典』監修:肥土伊知郎 出版:ナツメ社

『世界のウイスキー』著:マイケル・ジャクソン 訳:山本博福西英三 出版:鎌倉書房

『改訂版 モルトウィスキー大全』著:土屋守  出版:小学館

『モルトウィスキー・コンパニオン最新版』著:マイケル・ジャクソン、監修:土屋守、訳:土屋希和子・山岡秀雄 出版:小学館

*1:『改訂版 モルトウィスキー大全』 土屋守 P204

*2:なお、上で紹介した書籍では「グレンギリー」と紹介されています。「グレンガリオッホ」ではありません。私の勉強不足ですね……。