琥珀色の研究 -A Study in Amber-

( ・x・)<琥珀の沼で泳ぐ「ぱさぱさ」です。ご一緒にいかがですか?

バーバリー シングルモルトウイスキー エイジドインオーク since1968

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Burberry's SINGLE MALT WHISKY
Aged in Oak since 1968

【香り】

干しブドウのような濃厚な香り。また、黒糖のようにコクを感じる香り。ビターチョコレートのような香りも感じる。

時間が経つと人工的と感じる香りとともにライトな焦げ感が出てくる。これらの香りはやがて落ち着き、カラメルやメープルシロップのような香りが感じられるようになる。

全体を通して濃厚な甘さが強いものの、奥のほうに清涼感を感じる香りもある。時間をかけてじっくりと待つことで、多様な香りが感じられる。

【味わい】 

香りと比べるとやや軽い口当たりだが、まず甘みが感じられる。干しブドウのような濃厚な甘みだが、最後に苦みへと転じる。この苦みは医薬品の錠剤のような苦みにも共通していると感じる。

その後は清涼感が主張するようになるが、奥にジンジャーのようなスパイシーさ、枯れ草のような乾いた植物のような印象も感じられる。

全体的に甘やかな印象だが、ビターな部分がギュッと引き締める。

【もう少し詳しく】

バーバリーがリリースしたシングルモルトです。蒸溜年は1968年です。今から半世紀以上も前ですね。昔の雰囲気を再現したかったそうで、瓶も手作りなんだそうです。栓も最初からコルクではなく蝋で封をされた感じになっていました。

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このウイスキーは蒸溜所が明らかにされていません。日本限定だとも聞きます。

商品説明が書かれたカードに日本語も併記されていたので、日本向けであることは確実です。*1

リリース時期も不確かですが、熟成年数を考えると1990年頃。*2この時期の日本はバブル景気に沸いていました。その一方でシングルモルトはメジャーではありませんでした。

贈答品としては、蒸溜所名よりも「バーバリー」というブランド名を前面に出した方が良いと考えたのかもしれませんね。 

【噂される蒸溜所について】

「蒸溜所不明」のボトルは昔から色々とありました。少し前のマクファイルズ40年では、「G&Mですら名前を出せないあのお方」みたいな推理が成り立ちました。

amberlover.hatenablog.jp

最近は「シークレットスペイサイド」というヒントなんて序の口で、「シングルモルトロールスロイス」とか「あのマッ〇ランです!これは買いですよ!」とかも見かけます。バレバレなのでスゴイ勢いで売れていきます。

しかし、今回のバーバリーは本当に情報がありません。こういうミステリアスなウイスキーを愛好家が見逃すはずはなく、細々と議論が続いてきました。私が知る限り、候補として以下の蒸溜所の名が挙がっています。

ちなみに、バーバリーブレンデッドウイスキーにはバーンスチュワート社が経営していたディーンストンやトバモリーが原酒として使われていたことは有名です。*3

ただ、バーンスチュワート社がディーンストンを買収した年は1991年、トバモリーを買収した年も1993年なので、今回のリリースとは、ちょっとズレると思います。

なお、『1989年版の世界の銘酒事典』を引っ張り出すと「バーバリー12年(ブレンデッドウイスキー)」の原酒に「グレンスコシア」が筆頭に書かれています。

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私が「あれ?」と思ったのは販売元がHarveys of Bristol Ltd.となっている点です。Herveyといえば有名なシェリー会社です(2019年現在ホワイト&マッカイ傘下)。

そして、今回のシングルモルトシェリー樽熟成で、かなり濃厚な感じに仕上がっているという点です。

harveyssherry.com

シェリー樽について】

ここで思い出されるのは、このウイスキーが樽詰めされたのが1968年ということです。現在はシェリーを輸出するためには瓶詰めする必要がありますが、1968年は、まだシェリーを樽で輸出できた時代なんですよね。

ちなみに、シェリーについては簡単にまとめたので、良ければご参照ください。

amberlover.hatenablog.jp

話を戻します。1967年当時、スペインからイギリスやアイルランドに輸出されたシェリーの90%以上が瓶詰めされていないものでした。*4

そして、スコッチウイスキー用のシェリー樽はイギリスのブリストルが最大の供給元でした。ブリストル。そうですね、「Bristol」です。

では、なぜブリストルなのか?それは、ここに当時世界最大のシェリー会社「ジョン・ハーベイ社(John Harvey & Sons Ltd)」があったからです。*5

ここでHarveys of Bristol Ltd.」と繋がるわけです。

なお、スコッチウイスキー用のシェリー樽がブリストルで供給される状況は1970年代ごろまで続きました。

ですから、1968年蒸溜となる今回のボトルは、やはりブリストルのHervey社で供給されたシェリー樽なのかなあと思います。

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【で、蒸溜所について】

最後に原酒について。ここから先は主観100%ですが、上に挙がっている候補の中ではグレンドロナックかグレンギリーだと私は思っています。1つに絞らなければいけなくなったら、「グレンギリー」と答えます。

漠然とした印象ですが、錠剤のような苦みの部分が気になりました。スペイサイドど真ん中って感じじゃないんですよね。

あとは、マッカランとかグレンファークラスって、あんまりこういう印象無いんです。経験値が足りないだけかもしれませんが……。

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もちろん「グレンギリー」を「グレンガリオッホ」とか読んでいた身なので、偉そうなことは言えません。

「へー、そっかー」程度に思ってください。個人の感想なのでお許し頂ければと思います。

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なお、グレンギリーは1968年にいったん閉鎖していますが、この年に蒸溜されたボトルも色々と出ているので大丈夫でしょう。

外れたら外れたで、ウイスキーの奥深さと面白さを感じられますし。

いずれにせよ、人柱としてどなたかの何かしらの参考になれば幸いです。

【終わりに:思いついたこと】

グレンギリーって、特徴がコロコロ変わっている印象です。パフュームがあったり無かったり。個人的には割とスモーキーな印象を持っています。なので、今回のボトルの特徴化?と問われれば疑問が残ります。

amberlover.hatenablog.jp

今回は消去法でしたが、ケミカルとでも言うのでしょうか、とにかく錠剤のような苦みが特徴だと思います。

ちなみに、候補の一つとしてグレンドロナックが挙がっていると書いたので、現行の18年アラダイスと比べてみたくなりました。

そこで、戸棚から引っ張り出してきました。これ美味しいんですよ。

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そういうわけで、飲み比べについては次回にまとめます。では、今日はこのあたりで失礼させていただきます。

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ずっとお世話になっていた方が独立されたので、お邪魔させていただきました。帰宅して真っ先に出迎えてくれたキルシュさんです。
「世界一可愛いよ!」と王国民のように叫びたいです。

【参考にした書籍およびWebサイト】

*1:カードを失くしてしまったので、見つかったら写真を載せます。

*2:1988年リリースという話も見かけます。確かに「1968(蒸溜年)+20(最低熟成年数)=1988(リリース年)」という計算は成り立ちます。

*3:ブレンデッドスコッチ大全|土屋守小学館)1999年初版第1刷:P50

*4:シェリー - 志學社第1版第2刷P227

*5:稲富博士のスコッチノート 第76章 イングランド、昨今の酒事情-1.ハーベイのブリストル・クリーム [Ballantine's]