琥珀色の研究 -A Study in Amber-

( ・x・)<琥珀の沼で泳ぐ「ぱさぱさ」です。ご一緒にいかがですか?

富士山麓 樽熟50°(終売品)

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富士山麓 樽熟50°
発売元:キリンディスティラリー
アルコール度数:50%
容量:600ml
種別:ブレンデッドウイスキー
地域:日本

【香り】

アルコール度数の高さはしっかりと感じるものの、香りそのものはバニラのような甘い香りが主張する。そのなかにライムのようなフレッシュさやミントのような清涼感、草野ような青っぽさも拾える。また、しっかりと吸い込むことで、穀物のような香ばしさやオイルのような香りも感じられた。

時間が経つと、果実を思わせる香り。オレンジのような柑橘系だと感じた。

【味わい】

少しとろりとした舌ざわりで、アタックも強く、アルコール度数の高さをしっかりと感じる。やや粗く若さを感じる。バーボンウイスキーのような雰囲気を感じる。

全体的にパワフルで大柄な印象を受けるが、果実のような柔らかい甘さとともに、淡い酸味も広がる。

余韻は少し短めだろう。穀物を感じさせる強い甘みを程よい渋みが引き締めながら、ゆっくりと消えていく。ただ、鼻孔に甘い香りが残る。この点は好みが分かれるだろう。

個人的には、ストレートよりもオンザロックで飲んだ方が好みだった。

【もう少し詳しく】

仕事が終わって「さあ帰るか」とスマホを見たところ、日経新聞の「富士山麓来年春を目処に終売」というニュースが目に飛び込んできました。

www.nikkei.com

思わず「なんだって?」と声を出して同僚に驚かれたのですが、でも、これ、めちゃくちゃショックです。

先日「FTBとザ・ニッカ12年の原酒は大丈夫なのかな?」とツイートしたばかりでしたが、まさかキリンさんも原酒不足とは。

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もっとも、こういう終売ニュースが出ると「うおお、キリンさん、なんでじゃあ!なんでなんじゃあ!」とかグチグチ言いたくなるのですが、それは言っても仕方がないので、なるべく前向きなことを書いていくことにします。

富士山麓については2回に分けて書きます。まず、今日は終売品となった富士山麓の樽熟50°について書いていきます。このボトル、北杜50.5°をまとめたときに一度登場しています。

amberlover.hatenablog.jp

現行品は、キャップ付近のカラーリングが黒主体ですが、この富士山麓は全体的に白いです。そこから私は「白富士」と呼んだりしています。

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さて、この富士山麓50°が発売されたとき、様々な話題を呼びました。

まずは何と言っても度数です。当時のジャパニーズウイスキーで50度を謳った商品って、ほとんどありませんでした。しかも、それが実質1000円以下で買えたんです。

そのため、50%というアルコール度数のウイスキーを初めて飲んだ方も増えたようで、「すげー!」という声もちょこちょこ小耳にはさみました。

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この富士山麓にちなんでキリンが打ち出していたのは「富士山麓ハイボール」ですね。

これは何かと言うと、ウイスキーと炭酸水の割合を富士山登山に引っ掛けたものです。

ちなみに、私は七合目ハイボールが好きです。

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詳しいことはフードリンクニュースさんを参照していただいたらと思うので、リンクを貼っておきます。居酒屋などで見かけたポスターも紹介されているので、当時の雰囲気を味わうことができますよ。

archive.foodrink.co.jp

さて、話題を呼んだことについて話を戻します。実は、良い方向ばかりに話題を呼んだわけではありませんでした。

このバージョンの富士山麓をリリースするにあたり、キリンさんが目指したのは「済んだ味わいの中に広がる甘い樽熟香」とのことです。*1

樽熟香といえば「オークマスター樽薫る」は、知名度が低いものの安ウマウイスキーですね。

www.kirin.co.jp

ただ、その樽熟香が賛否真っ二つだったんです。というのも、テイスティングに書いた通りバーボンライクな造りなんですね。

否定派からは「ジャパニーズバーボン」とか「コーラで割ったら美味い」とか言われ、果ては「甘いだけのウイスキーっぽい酒」という意見も見かけたことがあります。

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その一方で「うるせー、誰が何と言おうが俺は好きなんじゃー!」というファンがいたことも事実です。度数が高いのに甘い飲み口が好まれたんですよね。

一時期、「眺める富士山麓グラス」がオマケでついてきたことがあって、私はこのグラスで飲むが好きでした。

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このグラスは底の部分に富士山を模したでっぱりが設けられていて、「赤富士」があるように見えるんです。

いや、だから何だという話ですが富士山麓を富士山があるグラスで飲むと、ちょっとだけ楽しい……気がしませんか?

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ちなみに、現行の富士山麓は好意的な声を目にするようになりました。特に「度数の割に優しくて飲みやすい」というレビューを見かけることもあります。 

これについては、もともとキリンさんが「クリーン & エステリー」を謳っていた*2ことが功を奏したのかな?と思います。

news.mynavi.jp

この他、キリンさんはグレーンウイスキーにこだわっていらっしゃいますよね。

『WhiskyGalore』誌では、ウイスキー文化研究所代表の土屋さんとキリンマスターブレンダーの田中城太さんが二度にわたって対談されていますが、その1回目*3はグレーンウイスキーをメインに話が進んでいます。

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 2回目は2018年8月に発売された第8号です。シグネチャブレンド発売に絡んだものなのですが、ここでもやっぱりグレーンウイスキーの話が出てきます。

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我々がつくるグレーン原酒は大きく3つに分けられます。連続式蒸留器(マルチカラム)でつくるライトタイプ、バッチ式のケトル蒸留器でつくるミディアムタイプ、バーボン用のダブラー蒸留器によるヘビータイプです。

『WhiskyGalore』Vol.08 P98(色分け部分はぱさぱさ加筆)

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今後のことは私には分かりませんが、「富士山麓」はキリンブランドでは初の国産ウイスキーです。シグネチャブレンドだけ残す、というのは無い気もします。

なぜかと言うと、ウイスキーに親しみが薄い方にとって、1本5000円のウイスキーはなかなか買わないと思うんですよ。

ですから、加水して度数を落としつつお値段据え置きか、ちょっと値上げした富士山麓が販売される可能性は残っているだろう。私はそう考えています。

もしそうなった場合、どれぐらいのアルコール度数でリリースするのでしょうか?私は最初43%ぐらいだと考えていたのですが、フォロワーさんと話していると、もうちょっと度数が高くなるのかな?と考え直しました。46%ぐらいでしょうかね?

もしも出たら、の話ですけれど。

【おわりに】

実は、私にとってこの富士山麓は他界した父親と一緒に飲んだウイスキーでもあります。父親とは、まあ色々とあったのですが、飲むたびにとても懐かしい気持ちになります。

時には昔のことを思い出しながら、新しい家族を大切にしていきたいですね。そんな柄にも無いことを思いながら、本日はこの辺で失礼させていただきます。

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*1:ウイスキー基本ブック』

*2:水やきれいな空気など、整った環境を保つために、蒸溜所の敷地の多くを自然のまま残すなどこだわられています。

*3:1回目は2017年2月に発行された創刊号