琥珀色の研究 -A Study in Amber-

( ・x・)<琥珀の沼で泳ぐ「ぱさぱさ」です。ご一緒にいかがですか?

ロングジョン ロイヤルチョイス 21年 クリアボトル

f:id:pasapasadayo:20180122221001p:plainLongJohn
・ROYAL CHOICE Deluxe Blended Scotch Whisky 21YEARS OLD
・最低熟成年数:21年
・アルコール度数:43%
・容量:750ml
予想される主要構成原酒
トーモア、グレンアギー(閉鎖)、ベンネヴィス、キンクレイス(閉鎖)、ラフロイグ

【香り】

 注いだ直後甘く香ばしい穀物やカラメル。ただ、時間が経つと膏薬のような香りも出てくる。

【味わい】

 飲んだ直後は穀物や干し草。時間が経つにつれて、少しずつ落雁のような砂糖菓子っぽい甘さと薬っぽいピートが感じられるようになる。余韻もピート香が主張するが、薬くささではなく土っぽさを感じる。長くないものの、心地よくじんわりと消えていく。

 開栓直後の印象は「美味しいブレンデッドウイスキー」でした。落雁のような砂糖菓子の甘みを感じたあとに、結構ピートを感じてすっきりフィニッシュ。「ちょっとピートが強いけれど、上手に作られたブレンデッドウイスキーだなあ。結構万人受けするウイスキーかな。」

 最初はそう思ったんです。

 ところが、数か月が経過してから再び飲むと……不思議なことに、なんか薬っぽさが出てました。「膏薬」と表現しましたが、真っ先に思いついたのは「薬箱」を開けた時の香りです。今の家にはあまりないかもしれませんが、私の家には木製の薬箱がありました。こういうやつです。

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 私は田舎育ちなのですが、あまり運動神経は良くなくて、坂道でこけたり側溝に転落したり、挙句の果てには田んぼにハマってさあ大変、みたいなこともありました。

 頻繁に流血する私に、母親は「あんた、またコケたの?ツバでも塗っとき」と言うものの、最後は薬箱から消毒薬と絆創膏を出してくれました。その薬箱を開けたときの匂いと、よく似ていたんですね。

 そんなわけで、このウイスキーを久しぶりに飲んでちょっと切なくなりました。ええ、もう立派なオジサンです。

f:id:pasapasadayo:20180211132335j:plain ちなみに、ハイボールでは香りが抑えられて特徴が消えてしまいました。ですので、ハイボールを作るなら濃く作ることをお勧めします。また、ロックでも美味しく飲めると感じました。

  なお、ロイヤルチョイスの特徴的な香りについては、構成原酒を見る限りラフロイグによるものでしょう。この点については、後述します。まずは、このボトルがいつごろの物なのか調べました。

このボトルの年代について

 そろそろ資料も増やしたいなあと考えていますが、『世界の名酒事典』しか無いのでロングジョンのラインナップの変遷を調べました。

1982-83年版(昭和56年11月情報)

・ロング・ジョンスタンダード
・ロング・ジョン12年
・ロング・ジョン12年ストーンジャグ

1984-85年版(昭和58年11月情報)

・ロング・ジョン
・ロングジョン12年
・ロングジョン12年ストーンジャグ
・ロングジョン21年(クリアボトル)←今回のボトル

1992年版(平成4年12月情報)

・ロング・ジョン
・ロングジョン12年
・ロングジョン12年ストーンジャグ
・ロングジョン21年ロイヤルチョイス(青いボトル)

 以上のことから、本の情報が誤っていなければ、少なくとも1980年代前半から流通し始め、1992年ごろには陶器のボトルに切り替わっていったと言えるでしょう。

 ちなみに、ロイヤルチョイスの名前の由来については、ボトル裏にシールが貼られています。f:id:pasapasadayo:20180211132338j:plain

ロングジョンについて

 ロングジョン社は1956年から1975年の間、アメリカの企業の傘下に入っており、スタンダード品は当時のアメリカでウケていたライトタイプだったそうです。その一方で、このロイヤルチョイスにはラフロイグを多くブレンドしていたそうです。

 開栓直後には「ラフロイグ入ってるの?本当?」という感じでしたが、数か月経ってから飲むと、印象が変わりました。こういう変化があるのも、楽しいですよね。

 なお、レンアギーは1983年に、キンクレイスは1975年に閉鎖されています。キンクレイスについては、昔、1度だけ飲んだことあって「ああ、美味しいなあ」と思った記憶があります。

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 ただ、キンクレイスは、今となってはボトル1本が10万円ぐらいの価格で、私にはとても手が出ません。

 このボトルの販売時期が1992年以前ということは「1992年-21年=1971年」以前の原酒が使われていることになります。となると、このボトルには確実にグレンアギーとキンクレイスの原酒が使われているでしょう。そう考えると、なかなかロマンがありますね。 

おわりに

 構成原酒の「ベンネヴィス」は、創業者が創設して現存するものの、ロングジョンとの関係はなくなっているようです。*1

 なお、「LongJohn」は創設者の「ジョン=マクドナルド」のあだ名……という話は、今さら書かなくても多くの方が書かれているし、そもそも公式サイトにも詳しく書かれています。サクッと読めて、ためになります。ぜひご覧ください。

ロングジョン-LONG JOHN

*1:2018年2月時点で、ベンネヴィスはニッカ、ロングジョンはペルノ・リカールへと所有が移っています。