琥珀色の研究 -A Study in Amber-

( ・x・)<琥珀の沼で泳ぐ「ぱさぱさ」です。ご一緒にいかがですか?

ブティックウイスキー ポートシャーロット 14年 バッチ5

【はじめに】

九州北部を中心に大雨が降り続いており、亡くなった方もいらっしゃるなど、大きな被害が出ています。

特に水害も発生していて、家屋の浸水が発生すると、復旧まで本当に長い時間が必要となります。今回の被害が少しでも軽微に収まることを願っています。

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PORT CHARLOTTE
14 Year Old
That Boutique-y Whisky Company バッチ5
アルコール度数:51.1%
熟成年数:14年
地域:スコットランドアイラ島

【香り】 

グラスに注いだ直後はリンゴのようなフルーティーな香りが強い。この香りは、時間が経っても減衰せず、核となっていると感じた。

少し時間が経つと徐々にスモーキーさが顔を出した。薬品臭も感じたものの決して強くはない。また、潮風を連想する香りも感じた。

その後、柔らかく甘みを感じさせる麦の香り、帆布、ジンジャー、木片などの要素も拾えた。

【味わい】

アタックは予想よりも強くは無い。酸味や渋みよりも、甘みが強く主張する。その後、鋭い清涼感を持つハーブの印象を受けた。

甘みの印象としては黒糖シロップのようなぺったりした甘さだが、上記の通りシャープで清涼感があることに加え、焦げ感も主張するため不快ではない。

余韻は少し長めでピートが強く主張する。また、カカオパウダーのような少しビターでコクのある味わいも感じた。

【もう少し詳しく】

ポさんからいただいたポートシャーロットのサンプルまとめ第二弾です。今回はブティックウイスキーのものです。ブラインド問題のときと同じボトラーズさんですね。

前回のアデルフィーのポートシャーロットは、アルコール度数が57.9%でした。それに比べると、今回はアルコール度数が下がったので「サラッと飲めるな」と思いました。

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amberlover.hatenablog.jp

ただし、今回のブティックのアルコール度数は51.1%なので、お酒を召されない方からは「なにを言っているんだ」と呆れられるかもしれません。

さて、このボトラーズブランドはラベルが特徴的ですが、このボトルのラベルはまさかの分子モデルです。

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ラベルに描かれている輪っかは、公式サイトに以下のように書かれています。

As such, we’ve given centre stage to the 5 molecules that produce the phenolic compounds in peated whisky. (青太字傍線部はぱさぱさ加筆)

これを訳すると、こんな感じでしょうか……?

そういうわけで、ピーテッドタイプのウイスキーに含まれるフェノール化合物を作り出す5種類の分子に焦点をあててみたのです。

www.thatboutiqueywhiskycompany.com

……フェノール化合物とか久しぶりに見ました。化学が苦手な生徒だったので全く自信が無いのですが、ラベルに描かれている「5 molecules」は、どうやら以下の5種類だそうです。

  1. フェノール
  2. オルトクレゾール
  3. メタクレゾール
  4. ラクレゾール
  5. グアイアコール

異性体とか久しぶりに見ました……。

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これらの特徴をまとめると、以下の通りでした。

  • フェノールは50%程度含まれ、薬品の臭いなどを感じる。
  • クレゾールは40%程度含まれタールや消毒液、アスファルトなどの臭いを感じる。
  • グアイアコール10%程度含まれ、焙煎香などの焦げ臭を感じる。

なお、グアイアコールは、「ウイスキーを水で希釈すると風味が増す理由はなぜか?」という論文で注目を集めました。それがこちらです。

www.nature.com

英語が嫌いな私のような人間は、予め日本語で書かれた概要を読んでおくと少しは楽になる……気がします。

「これなら読んでみようかな」と思われた方は、是非トライしてみてください。

www.natureasia.com

ちなみに、グアイアコールは珈琲にも縁があるらしくて、珈琲豆の香りの分析結果が公開されていました。PDFファイルですが、珈琲もお好きな方の興味を引く分析だと思います。

多変量解析を用いたコーヒー豆の香り評価:Webnta:日立化成テクノサービス(株)分析センター 

ちなみに、缶コーヒーやインスタントコーヒーについても分析しているので、そちらも併せて読まれることをオススメします。

【最後に】

私は学生時代の成績は良いものではなく、化学も英語も嫌いでした。それなのに、まさかウイスキーがきっかけで勉強することになるとは、夢にも思いませんでした。

何があるか分からないなあと思いつつ、本日はこのあたりで失礼させていただきます。

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サランラップの芯で遊ぶ2匹です。最近は2匹とも成長してきたので、使い慣れたおもちゃへの反応が薄くなってきました。

そのため、色々なおもちゃを試す日々です。

 【参考にした図書とWebサイト】

ピートとフェノールの不思議 | WHISKY Magazine Japan

多変量解析を用いたコーヒー豆の香り評価:Webnta:日立化成テクノサービス(株)分析センター

ウイスキーコニサー資格認定試験教本2018【上巻】

Dilution of whisky – the molecular perspective | Scientific Reports

User:Benjah-bmm27 - Wikimedia Commons

*1:著作権が発生しないパブリックドメインの図ですが、作者を掲載します User:Benjah-bmm27 - Wikimedia Commons