アードベッグ グルーヴス
ARDBEG
GROOVES LIMITED EDITION
最低熟成年数:不明
容量:700ml
アルコール度数:46%(ノンチルフィルタード)
地域:アイラ島(ポートエレン周辺)
【テイスティングコメント】
通常のアードベッグよりも、燻した香りや炭のような香りが強い。これに加えて、クレオソートや溶剤、松脂といった香りも強い。
公式では「焚き火のような薫り」という表現も見られるが、焚き火よりも大規模なもの、例えば野焼きのようなイメージを抱いた。
少し落ち着くと、スパイシーさや甘い香りも感じられた。果実の風味はあまり拾えなかったが、リンゴのニュアンスは感じられた。また、スモークした果物の香りも感じたが、それが何かまでは拾えなかった。
この他、レザーのような香りもほのかに感じた。これは赤ワイン樽の影響だろうか。
かなりスモーキーなので、時間をかけてじっくりと味わったほうが深く楽しめると感じた。
【留意点】
バーで隣に座った方とアメリカンウイスキーの話で盛り上がったため、テイスティングにあまり時間をかけていません。
時間をかければかけるほど面白いと感じたので、もう少し時間をかけて飲んだ方が良かったです。ですから、その点はご考慮ください。
【もう少し詳しく】
毎年6月はじめにやってくるアードベッグDAY。東京から遅れることひと月、私が住むこの世界の片隅にも、ついに波が到達しました。今年のアードベッグのコンセプトはLOVE&PEACEならぬ「LOVE&PEAT」。
我が家のオス猫の名前が「ピート」ですが、由来はこのPEATなんです。
さて、今回のグルーヴスのPVを眺めていると、いきなり1969年にさかのぼり、犬(ショーティーくん?)が子犬に戻り、おじさんはヒッピーな感じに……。去年のケルピーで「もう何も怖くない!」と思ったはずなんですが、まさかこんな路線で来るとは思いもよりませんでした。
Groovesについてはダブルミーニングしょうね。「最高にハイってやつだぜ」という感じの高揚感(Groove)と、「深い溝」あるいは、そこから転じた「深く焦がした」という意味(Groove)をかけている……のかな?
今回のグルーヴスは、バーボン樽で熟成した原酒に、内側をしっかり焦がした赤ワイン樽で熟成した原酒を加えています。PVにも樽が激しく燃える場面があるし、裏ラベルにも説明が書かれています。
「こんなグルーヴィーなアードベッグ見たことない!」と言われても、ちょっと困ってしまいますが、確かにスティルワインの樽による熟成って、アードベッグに関しては寡聞にして私は知りません。
近年のアードベッグの限定品を調べると色々な樽、どちらかといえば「その樽、なに?」と戸惑うような樽を使っていますよね。
今回のグルーヴスは、飲んでみると、濃厚な甘みだけでなく焦げ感がしっかり出ています。公式テイスティングで「焚き火」と表現している部分は、おそらくこの焦げ感を指しているのでしょう。
もちろん、TENもスモークやクレオソートといった部分は感じますが、その一方で、干しアンズやトフィーといった、強めの甘みも感じます。今回のグルーヴスも強い甘みは感じるんですが、その甘さを遥かに上回る、力強いスモーキーさが感じられました。
ウーガダールやアンオーが好きな方は、もしかすると「ちょっとキツいかなあ」と感じられるかもしれません。
ただ、冒頭に書いた通り、今回は隣に座った方とアメリカンウイスキーの話で盛り上がったため、テイスティングが少々アバウトです。その点は、ご留意くださいね。
特に、ゆったりと時間をかけるかどうかで印象も変わってくると感じました。今度は、1時間ぐらいかけてゆっくり楽しもうと思います。
何だかんだ書いてきましたが、私はアードベッグの限定品が好きです。話題性があって、スタンダードとなは異なるけれど、アードベッグのイメージを損なわないウイスキーって、なかなか難しいと思うんです。
確かに「いくら樽を焦がしたからといって、Groovesってどうなの?」とか「LOVE&PEATってこっぱずかしいじゃん」なんて考えも、ちょっと頭をもたげるかもしれません。でもね、去年はコレですよ、コレ。
これと比べたら、今回のグルーヴスはかわいいもんです。それに、こういうお祭りは、やっぱり楽しんだもの勝ちでしょう。
響けBEAT!高鳴れHEART!乗るしかない、このビッグウェーブに!
この精神で、去年のケルピーのときと同様に、深く考えずウイスキー沼で泳ぎましょう!
【『意味がなければスイングはない』】
ここからはGrooveとは少し離れますが、音楽つながりで村上春樹さんのエッセーに『意味がなければスイングはない」というものがあります。
ウイスキー好きには『もし僕らの言葉がウィスキーであったなら』のほうが有名かもしれませんが、『意味がなければスイングはない』という本は、村上さんがお好きな音楽について語られています。
村上さんの小説をきちんと読むのは、羊三部作とノルウェイの森あたりで止まっていますが、エッセーはそこそこ読んでいます。
故安西水丸さんのコミカルな挿絵も素敵だった「村上朝日堂」シリーズや、ananで連載され、大橋歩さんの細いタッチの銅版画も話題を呼んだ「村上ラヂオ」などは、特に気に入っています。
このまとめを書きながら、活字を追いながらウイスキーを飲みたくなりました。というわけで、ちょっと一杯やってきますね。それでは。