琥珀色の研究 -A Study in Amber-

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グレンフィディック 15年 (12年、15年、18年飲み比べ その2)

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Glenfiddich 15YO

シングルモルトウイスキー
・最低熟成年数:15年
・アルコール度数:40%
・容量:200ml

【香り】

 蜂蜜やレーズン、あるいは煮詰めた砂糖のようなコクを感じさせる甘い香り。同時に木の香りや溶剤の香りも感じる。少し落ち着くとバニラの要素が出てくる。

【味わい】

 口に含んだ時の甘みは強いが、徐々にビターな甘みに変化していく。また、甘みとともに、ややスパイシーな香りが鼻に抜ける。余韻は再びモルティーな甘さが強くなり、長く豊かに続く。ピートはほとんど感じない。

【飲み比べの感想について】

 15年はコクがあって、しっかりした甘さが味わえる。熟成感もあり、樽由来のスパイシーさも淡く感じることができる。大きな弱点もなく、個人的には万人受けすると思う。あえて弱点を言うなら、樽由来の香りが強いとも言えるので、敏感な方は苦手に感じる可能性がある。

 15年を飲んで、もっとフレッシュでさっぱりしている方が良いならば12年を飲んでみてほしい。また、15年よりも複雑な味わいを楽しみたい方は18年の方が好みではないだろうか。

 【もう少し詳しく】

 グレンフィディック15年は12年と大きく異なる味わいです。単純に最低熟成年数が3年増えただけではなく、シェリー樽の影響を明確に感じます。

 実際に、ボトル正面のラベルを見ると「SOLERA」と書かれています。これは「ソレラ」と読み、シェリーというお酒の伝統的な製法です。

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 ボトル裏に貼ってあるラベルを読むと、やはり4行目に「Solera」という言葉が書かれていることに気がつきます。グレンフィディック15年は、どうやら、この「ソレラ」を前面に押し出しているようです。ただ、解説文を読んでいると「あれ?」と思うことがありました。

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 私が気になったのはmarried in our unique,handcrafted Oregon pine Soleraという表現です。英語は苦手なのですが、この文章からは「ソレラからヒントもらいましたが、ウチ独自のやり方なんですよ?」というニュアンスを感じる……気がします。

 そこでグレンフィディックの公式サイトを読むと、以下のように書かれていました。

シェリー樽熟成に用いられるソレラシステムを応用することで生み出されました。 そのほのかにスパイシーで円熟した味わいは“ソレラバット(大桶)”の錬金術の賜物とも言われ、バーボン樽、ホワイトオーク新樽、シェリー樽の3種の樽で熟成したモルトウイスキーを ソレラバット(大桶)で約6ヶ月間後熟することで誕生します。

www.glenfiddich.com

 やはり「ソレラシステムを応用する」という部分が気になります。また、その後に続く3種類の樽の方式も、私が聞きかじったソレラシステムとは明らかに異なります。

 一体、どのように違うのか気になったので調べました。まずは、通常のソレラシステムとはどのようなものなのでしょうか?

「ソレラシステム」とは

 「ソレラシステム」はシェリー酒用に準備したワインを熟成させていくための方法です。「Soleraシステム」と書くと「EXAMシステム」とか「ALICEシステム」みたいでカッコいいなーと思ったものの、ソレラとはスペイン語の「床」という意味から名付けられたそうです。つまり、「ソレラシステム」とは「床方式」みたいな感じになるわけで……うーん……何というか一気に現実に引き戻されますね。

 気を取り直して、続けます。あらためて色々な文献を読んで図にまとめました。こんな感じになるかと思います。

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 積み上げる段数は、ボデガによって異なるそうですが、一番下の樽は「ソレラ」と呼ばれ、一番年数の古いワインが入っています。すぐ上の段の樽は「第1クリアデラ」と呼ばれ、ソレラより少し若いワインが入っています。「第2クリアデラ」に入っているのは第1クリアデラより少し若いワイン、「第3クリアデラ」には「第2クリアデラ」より少しワイン……という仕組みになっています。

 そして、出荷されるのは、常にソレラの樽からとなります。

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 ソレラが減った分は第1クリアデラから補充し、第1クリアデラが減った分は第2クリアデラから補充し……というシステムです。一番上のクリアデラの補充は、専用に酒精強化された新しいワインを使うということです。

 これが「ソレラシステム」で、「うなぎのタレ方式」とか「秘伝のタレ方式」と仰る方もいらっしゃいます。

 では、グレンフィディックの方式はどのようなものなのでしょうか?

グレンフィディックの「ソレラ」方式

 オフィシャルサイトの表現は、こうです、

  1. 原酒を「バーボン樽」「ホワイトオーク新樽」「シェリー樽」の3種の樽で熟成させる。
  2. その後、ソレラバット(大桶)で約6ヶ月間後熟させる

 ちょっとイメージが曖昧だったので調べていくと、海外のワイン商の方が詳しく言及されていました。図解もわかりやすかったです。

blog.nickollsandperks.co.uk

私なりに整理すると、こんな感じでしょうか。

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 確かに、伝統的なソレラシステムとは異なりますが、ソレラシステムの「継ぎ足していく」という点は一緒ですね。

 というか、こっちの方式こそ「うなぎのタレ方式」とか「秘伝のタレ方式」だと私は思うのですが……いかがでしょうか……?

 おわりに

 木の要素が嫌でなければ15年はとても美味しく飲めると思います。

 特に、マッカラン12年が好きだけどなかなか買えないよ」という方は、是非一度飲んでみてほしいなあと思います。マッカラン12年を血眼になって探し回ったりプレミア価格で買うより、心穏やかに飲めると思います。

 もちろん、マッカラン12年を悪く言うつもりはありません。また、マッカラン12年を好まれる方を貶すつもりもありません。

 ただ、 現在のマッカラン12年は品薄ということもあって2018年2月現在の実売価格は8000円を超える勢いです。それに対して、グレンフィディック15年は6000円も出せばお釣りがもらえるぐらいの価格です。

 ピンチはチャンスと言いますが、色々なウイスキーを飲んでいく良い機会になるのではないでしょうか。私はそう思っています。