琥珀色の研究 -A Study in Amber-

( ・x・)<琥珀の沼で泳ぐ「ぱさぱさ」です。ご一緒にいかがですか?

『バーボンの歴史』の感想など

【最初に】

今回は、『バーボンの歴史』(原書房)という本の紹介と自分の雑感が中心です。ウイスキーレビューは無いので、その点はご了承ください。

【もう少し詳しく】

「よーし、ジェムソンのハイボールを飲み比べるぞー」と思って迎えた先週末。見事に体調を崩して熱を出してしまいました。

平熱が35℃台後半なので、37℃を超えてくると胸がドキドキ、視界がふわふわしてくるんですよね。そんなわけで、布団に潜り込んでおとなしく読書をしていました。

何を読んでいたのかというと、コレです。

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バーボンの歴史 - 原書房

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読み進めると、次々に「あ、聞いたことある」という人が出てきます。

  • ジュリアン・"パピー"・ヴァン・ウィンクル
  • エドモンド・テイラー
  • ジェイムズ・クロウ
  • ジョージ・T・スタッグ
  • ジム・ビーム

などなど、いずれもバーボンの名前になっている方々が次々に登場するので、親近感を抱きながら読み進めていけます。

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ただ……難点が一つあるんですよね。試しに最初の数ページを張り付けてみるので、眺めてみてください。どうでしょうか。

1ページ目。

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2~3ページ目

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おわかりいただけただろうか?

横に並べてみるので、もう一度よく見て欲しい。

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そう、挿絵が無いんですよ。

この後も挿絵は無くて、実質396ページにわたって文字オンリーです。

「ん?写真貼ってあったよね?」と言われそうですが、上で引用した写真は初めのほうにまとめられていて、その後は全て文字なんです。

もちろん、内容は面白いです。「ワシントンが違法な酒を振る舞って当選した」とかアメリカ人は『外国の蒸溜酒』の模造に長けていると揶揄された」といった小話や、「チャーされた樽でケンタッキー・ウイスキーを熟成させたという記録は、1826年が初出である」というような豆知識も出てきます。

でもねえ、なにせ、全編を通してこんな感じです。

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活字を追うのは好きなんですが、さすがに目がチカチカしてきて休憩しながら読みました。おかげでよく眠れました……。

私は「書評」なんて書けないので、せっかくだから「読む時間も無いよ!」と言う方に向けて、特に面白かったところを紹介させていただくことにします。

禁酒法について】

第3章で樽について詳しく書かれているのも良かったんですが、やっぱりアメリカとお酒の歴史と言えば、やはり禁酒法ですよね。ただ、「禁酒法って何なの?」と尋ねられると、ありきたりのことしか説明できませんでした。

そういう意味で、「第10章 禁酒法」から「第12章 復活と苦難」までが非常に勉強になったし面白かったです。

禁酒法という名の混沌が、いかにしてアメリカに這い寄り、どのように席巻し、そして、なぜ失敗に終わったのか?それが理解できました。

まず、この写真を見れば、当時がいかにカオスな時代だったのかが伺えますよね。

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ただ、これ以上に驚かされたのがキャリー=ネイションさんという方です。この方は禁酒法が制定される前なのに、手斧片手にバーに乗り込み客を説教しつつ、酒瓶をたたき割っていたんですね。しかも時には賛美歌隊も引き連れていたのだとか。

Wikipediaですがお写真と説明を引用させてもらいます。

ネイションは大柄な女性で、身長は6フィート(180cm)近く、体重は175ポンド(80kg)近くあった。彼女は自らを「キリストの足元を走り、彼が好まないものに対して吠え掛かるブルドッグ」だと述べ*1、バーの破壊による禁酒主義の推進を神聖なる儀式だと主張した。

Hellsing』のアンデルセン神父のように「我らは神の代理人神罰の地上代行者。」みたいな信念をもって、歌いながら突撃してくるんですよ。バーの住人にとってホラーですし、迷惑以外のなにものでもありません。

もっとも、ポイントはキャリーさんご本人ではなく、なぜ彼女がこのような行動に出たのか?という部分だと思います。

このあたりの経緯は、彼女の生い立ちに加えて社会情勢や宗教も絡んで複雑なのでWikipediaの記事を参考にしてみるのも良いでしょう。

日本語版と英語版で少し内容が異なるので、Google翻訳などを使いつつ両方読むと良いですね。

キャリー・ネイション - Wikipedia

Carrie Nation - Wikipedia

ちなみに、アメリカは宗教色が根強い地域があるのは聞いたことがありますし、実際に今年の5月にアリゾナ州ダーウィンの進化論が否定されて驚いた記憶があります。

thehill.com

gigazine.net

話を戻します。

禁酒法といえば「運び屋(ブートレガー)」が出てきますが、霊柩車を改造した整備士の話やNASCARのスター選手になったブートレガーの話などが興味深かったですね。

今やNASCARアメリカ最大のカースポーツとのことですが、こんな歴史があったなんて私は知りませんでした。

business.nikkeibp.co.jp

【まとめ】

確かに長いのですが、翻訳者の方の文体も読みやすいですし、アメリカの歴史も追いかけることができるので、読んで損は無いと思います。

時間に余裕のある方は本屋さんで手に取ってみてはいかがでしょうか?

週末は夫婦揃って体調を崩してしまったので、構ってもらえない猫たちは寂しそうでした。今日はたくさん遊んであげたのですが、もう少し遊んであげようと思うので、本日はこのあたりで失礼します。

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*1:McQueen, Keven (2001). “Carrie Nation: Militant Prohibitionist”. Offbeat Kentuckians: Legends to Lunatics. Ill. by Kyle McQueen. Kuttawa, Kentucky: McClanahan Publishing House. ISBN 0913383805.