初号ブラックニッカ 復刻版(加筆・修正あり)
東日本大震災で亡くなった方々に、心より哀悼の意を捧げます。
RARE OLD
BLACK NIKKA WHISKY
初号ブラックニッカ 復刻版
アルコール度数:43%
容量:720ml
最低熟成年数:不明
種別:ブレンデッドウイスキー
国:日本
主なモルト原酒:余市
【香り】
香りはあまり広がらない。リンゴの皮の部分を感じさせる爽やかで甘い香りもあるが、徐々に消えていく。時間が経つと、淡いながらも麦の香りが感じられる。
突出した香りは無く全体的に穏やかな印象を受けるが、強く嗅ぐことで、奥の方から土っぽさを感じる。これはピートによるものか。
【味わい】
ストレートで飲むと最初はニューポット感が強かったものの、時間をかけて飲むことで、しっかりとした甘さが感じられるようになった。
公式テイスティングの「チョコレート」という要素は、余韻の部分で感じられた。ビターチョコレートの印象。オンザロックにして飲むことで、このチョコレート感はしっかりと感じられた。
余韻はやや短いものの、穏やかなピートが感じられる。
【その他】
開栓は2015年です。一口だけ飲んで棚の中にしまってありました。その当時の自分と今の自分との比較を自戒を込めて書きました。
【もう少し詳しく】
ブレンダーズスピリットについて書いた際に、初号ブラックニッカについても触れたので久しぶりに棚から引っ張り出してきました。
初号ブラックニッカ復刻版は2015年に発売されて……などの細かなことは後に回して、先ずは感想から。
開栓は2015年でしたが、当初の印象は、率直に言って良いものではありませんでした。
当時の私は、公式テイスティングの「チョコレートを思わせるスイートさ」に「すっごく甘いのかな?」と期待していたのですが、そんなことはありませんでした。
常識的に考えて、ウイスキーがチョコレートになるわけがありませんよね。当時の私に「お前ェさん、いってぇなに考えてんだい?」と言ってやりたいものです。
しかし、当時の私は「うーん、期待していたのと全然違う……。まあ、1000円ちょいの価格だし、こんなもんかな?」と思い、そのまま棚の中に戻してしまいました。
そのまま棚に放置してあったのですが、先日ブレンダーズスピリットについて書いた際に「そういえば……」と思って、今回引っ張り出してきた次第です。
そんなわけで、比較しながら考えてみたいと思います。まずは、裏ラベルのキャッチコピーを読み比べてみましょう。
初号ブラックニッカ復刻版は「チョコレートを思わせるスイートさ」、ブレンダーズスピリットは「チョコレートのような甘い香り」とあります。
復刻版は味わいの部分で「チョコレート」を、ブレンダーズスピリットは香りの部分で「チョコレート」を、それぞれ挙げています。
ウイスキーを飲み慣れていない方が「あー、うんうん」と思うのは後発のブレンダーズスピリットではないかなあ?と思います。
というのも、BSはグラスに注いだ直後から芳醇な香りが漂ってくるんですね。
これに対して復刻版は、ちょっとニューポット感があります。となると、次の一手として、ちょっと待ったり加水したりして変化を楽しむことになりますよね。
基本中の基本ですが、2015年当時の私は、これができませんでした。テイスティンググラスに注いで、すぐに飲んで印象を決めつけてしまいました。今となってはお恥ずかしい限りです。
自分のなかで「ああ、こんなに変化するんだ。面白いなあ」とストンと理解できたのは、オールドマッカランを飲んだ時です。花動のカスクやレアモルトでも体感したのですが、一番印象に残っているのは、このマッカラン1946をゆっくり時間をかけて飲んだ時でした。
そもそも初号ブラックニッカが発売された1956年には、ウイスキーをストレートで飲む習慣は定着しておらず、オンザロックや水割りが中心だったのではないでしょうか?
そこで、今回はオンザロックを試したところ、これがピタッとはまり、公式テイスティングの「チョコレート」という部分が納得できました。
「うーん、美味しい!」「うへー、苦手……」という評価は大切なことですが、「苦手」という評価の原因が、実は自分の理解不足だったということがあります。
私も何度も失敗していて、例えば、以前にラフロイグPXなんかもそうですね。
恥ずかしいなあ……とは思うものの、だからこそウイスキーって面白いと思うし、ずっと楽しんでいきたいですね。
【初号ブラックニッカ復刻版について】
今回の初号ブラックニッカ復刻版は、1956年に発売された「初号ブラックニッカ」の味わいが再現されているという触れ込みです。
発売日は2015年1月27日で、もう4年以上も経ったのですね。
この時期のニッカさんは、「マッサン」の大ヒットによる追い風が吹いていました。ザ・ニッカ12年を発売した直後でしたが、復刻版3種を出すことでマッサン効果の持続を図ったのでしょう。
もちろん、竹鶴政孝氏の原点を経験してもらおう、という意図もあったのだと思いますけれど。
そんな復刻版の第1弾が、今回の「初号ブラックニッカ」です。味わいを再現するにあたり、未開封で保存していた「初号ブラックニッカ」を、ブレンダーさんがテイスティングされたとのことです。
ニッカさんの歴史をたどると、1956年には宮城峡蒸溜所は稼働していません。そのため、初号ブラックニッカに使われているモルト原酒は、余市蒸溜所のものだけです。
実売価格が1500円前後だったことを考えると、なかなか骨太で、よくできていると思います。
個人的には「モルト原酒は比較的若めのものを使い、カフェグレーンで香りや奥行きのバランスを取っているのかな?」と思いましたが、さて、どんなもんでしょうか?
【宮城峡蒸溜所の設立50周年について】
ところで、今年2019年は宮城峡蒸溜所の設立50周年となります。記念ボトルとかイベントとか色々あるだろうなーと思っていたのですが、30万円オーバーボトルを発売する、というリリースがありました。
発売予定日は、明日3月12日火曜日。なぜか余市のリミテッドエディションも同時発売されるそうです。
宮城峡のリミテッドエディションには、宮城峡蒸留所のファーストドロップを含め、1960年代から2000年代までの原酒を使っているそうです。
ニッカさん初のブラックボトルとのことで、なかなか斬新ですね。
上掲の「酒類飲料日報」さん 2019年3月1日付より引用
発売予定本数は各700本、海外用も各300本*1確保されているようですが……まあ飲めないんでしょうねえ。この「『どうせ飲めないんでしょ』が常態化しちゃうと怖いなあ」と思いました。
もちろん、こういうことはニッカさんも当然ご存知でしょう。また、2016年から増産体制に入っていますし、宮城峡蒸留所の敷地内に貯蔵庫を新設するというリリースもありました。
ニッカさんとしてはブラックニッカで裾野を広げてウイスキーファンを増やしたい、という戦略があると思うし、それは成功しています。*2
ただ、ブラックニッカを愛飲する層とモルトウイスキーを愛飲する層は、重ならない人も多いと感じています。極端な話ですが、余市12年を愛飲していた層がブラックニッカに移るかと言えば、ほとんど移らないのではないでしょうか?
私もその一人なのですが、ニッカさんを含め、各社が努力を重ねていらっしゃいます。それを応援しながら、気長に待とうと思います。
【最後に】
復刻版のリリースについては、今でも「あれがなければ、エイジ物が長続きしたんじゃないの?」とか「ザ・ニッカ12年を前面に出しておけばよかったんじゃないの?」といった声が聞かれます。そうかもしれません。私もそう思う部分もあります。
でも、ifの話は誰にもわかりません。わかっていることは、ノンエイジが標準になりつつあるということです。
某バスケ漫画の三井くんみたいに「佐久間ブレンダー、エイジ物が飲みたいです……」と思いつつ、本日はこのあたりで失礼させていただきます。