ラガヴーリン 16年(現行品) 【誤字等、加筆修正あり】
Lagavulin AGED 16 YEARS
最低熟成年数:16年
アルコール度数:43%
容量:200ml
種別:シングルモルトウイスキー
地域:アイラ(アイラ島南部)
【香り】
ヨードは感じるものの、アードベッグやラフロイグと比べると柔らかで温かく感じる。熟成年数に因るものか。時間が経つと甘く華やかな香りも漂い始める。また、ローリエのような明るくドライな香り、黒コショウのようなスパイシーな香りも感じる。*1
【味わい】
口に含んだ瞬間はパワフルなスモーキーさを感じる。スモーキーさについては、焚き火や野火というよりも、花火に感じる硝煙のようなニュアンスか。
こうしたスモーキーさは続くものの、出汁のような味わいに混じり、ウッディな要素やオレンジのような暖かみのある甘みも感じる。ボディは厚めだろう。
余韻は長い。複雑さについては意見は分かれるだろうが、私は複雑に感じる。例えばカカオを思わせるビターさ、魚の燻製を思わせるスモーキーさ、そして海藻のような香り、焦げた木片のような香りなどが、それぞれ少しずつ顔を出す。
【もう少し詳しく】
久しぶりの更新です。書き終えて気がついたら3500字を越えていてびっくりしましたが、Lagavulin16年が好きなんです。
さて、このLagavulinの読み方は年代によって異なるかもしれません。以前にまとめたグレンギリーについても、変遷をたどった経緯があることを最近になって知りました。
Lagavulinの読み方を具体的に書きだすと、ラガヴーリン、ラガヴリン、ラガヴァリンなどが挙げられます。もちろん最近は「ラガヴーリン」で統一されていますが、2000年代前半はラガヴァリンと読む方が多かったようです。
Googleで「ラガヴァリン」と検索すると、「ラガヴァリン?あー、ラガヴーリンで調べておいたよ」と言われます。
ちなみに、LagavulinのプロモーションPVを見ていると英語の発音は「LagaVulin」のように、LとVにアクセントがありますね。確かに「ラガヴーリン」です。
Single Malt Scotch Whisky lovers, unite. It’s #InternationalScotchDay. Sip responsibly. #ILoveScotch #JoinTheCelebration pic.twitter.com/BgWshxqHAV
— Lagavulin (@LagavulinWhisky) February 8, 2018
さて、そんなLagavulinを和訳すると「くぼ地の水車小屋」と言う意味だそうです。操業開始は1816年ですが、記録では1742年に「ジョン=ジョンストン」という人が住所登録していたとのこと。*2
蒸溜所の設立の経緯については、近所にあった10件の無認可小屋が協力して設立された、という話もあります。*3ウイスキーと密造は切っても切れない関係があったことをあらためて実感しました。
蒸溜所の場所はアイラ島の南部で、現在はポートエレン製麦所から麦芽の供給を受けているとのこと*4。このあたりは複数の蒸溜所が並んでいてコニサー試験でも「〇〇蒸溜所はどーこだ?」なんて出てきたりします。アイラモルトは好きな方も多いし特に難しい問題では無いかもしれませんが、私は方から辞書引きの順番だと覚えていました。
- Ardbeg
- Lagavulin
- Laphroaig
この3つの蒸溜所は場所が近いこともあってか、共通点を感じます。例えば、甘さという点で、私はラガヴーリンはアードベッグとの共通点があると私は感じます。
その一方で、スタンダードボトルの年数の違いはやっぱり無視できません。
マイケル=ジャクソンさんは「ラガヴーリンが16年物をボトリングするブランドでなかったら、問題にはならなかっただろう。」と述べています。
この点については、MHDのボブさんも次のように語っています。
蒸留したての若いラガヴーリンは、結構重たくてオイリーな性質なので、平均16年ぐらいかけないと雑味がなくならないんですね。
(赤太字部分は、ぱさぱさが強調)
webcache.googleusercontent.com
確かに16年熟成を謳うだけあって、口当たりが滑らかです。これについては、ラガヴーリンのマネージャーのジョジー=クロフォードさん曰く、以下の点が影響しているそうです*5。
- ポットスチルの形状がオニオンシェイプ型であること
- 初留釜のラインアームが下方に曲げられていること
- 再留に10時間かけること
【シェリー樽を使っているの?】
さて、16年以上の熟成ということもあってか、液体の色が濃いです。麦わらやゴールドというより琥珀色でしょう。アードベッグTENと比べると、明らかに違います。
そのためなのか、ラガヴ―リン16年について「シェリー樽熟成をしているのではないか?」という話を聞いたことがあります。
調べてみると、「ラガヴーリン16年はシェリー樽を使ってるよ」という話は、ちょこちょこ文献に出てくるんですよね。
例えば、こんな感じです。
アイラ独特のヨード臭と潮の香りを持つラガヴーリンは、この水とポットスティル、そして潮風にさらされたスペイン産のシェリー樽での熟成から生まれていた。
『スコッチウイスキー紀行 モルトの故郷を歩く』邸 景一著 日経BP社
2002年第2版本
写真まで載っています。
ただ、この点について、ウイスキーコレクターとしても有名な山岡秀雄さんは、2010年の記事で、以下のように書かれています。
マイケル・ジャクソンの「モルトウィスキー・コンパニオン」第4版、(日本語版では初版)に、こんな文章があります。
「生産者はこのバージョン(16年)のために、シェリー樽は使っていないと、折に触れて述べてきた、多分、ファースト・フィルは使っていないということであろう。シェリーの個性が残存していることは確かである」
この言葉が、あやまって一人歩きしてしまったような気がします。この当時(2000年頃)は、まだサードフィルなどのシェリー樽の使用率が、現在より高かった可能性はあります。
そのうえで、
現在の16年には、全くないと思います。シェリーをつかっていないことは、所長にも確認しました。
と結論付けています。
山岡さんはマイケル・ジャクソンさんの著書を数多く翻訳されています。その方が「所長にも確認しました」と仰っているので、間違い無いでしょう。そして、同じ時期の『WhiskyWorld』誌でも否定されていたと記憶しています。
私もシェリー要素は分からなかったので、使ってない方に一票を投じます。
他のクラシックモルトとの比較
ところで、年数を取り上げたのでクラシックモルトについて、スタンダードボトルの年数もまとめておきます。現行品は、以下の通りです。
今回のラガヴーリンは16年なので、最も長い熟成年数となります。ラガヴーリンはパンチがあるものの、味わいは比較的マイルドです。熟成年数も影響しているのでしょう。
ちなみに、ラガヴ―リン16年は少し前にラベル変更がありました。下の写真のヨット(?)が王冠だったんですね。
今ではオークションサイトなどでは旧ラベルのラガヴーリンが高騰しています。ただ、現行品も美味しいんですよね。味わいについては、少し変化があったのは事実ですが、そこまで目くじらを立てるようなものかな?とも思います。
ちなみに最近暑い日が続いているので、ハイボールも試してみました。私はストレートの方が好みですが、夏場はこういう飲み方も楽しいですね。
さて、そんな美味しいラガヴーリン16年も、皆様ご存知の通り値上げされました。王冠時代は5000円ぐらいでお釣りが出たのですが、どんどん値上がりしますね。フルボトルを1本確保しておいても良いかなあと思っています。美味しいですから。
最後に、ちょっと雑談を。
GoogleMapを眺めていて思ったのですが……「ラガヴュリン湾」。これは初めて目にしました。よく見るとラフロイグも「ラフロエグ・ディスティラリー」になっています。なぜこんな表記になったのか不思議ですが、Googleさんは時々「え、なんで!?」と言う部分がありますね。
ちなみに猛暑が続いていますが、ネコは2匹とも元気です。熱中症にならないようにエアコンをかけているのですが、あまり好きじゃないみたいですね。